抄録
症例は78歳,男性.1982年,大動脈弁閉鎖不全症に対して大動脈弁置換術を施行され,抗凝固療法中であった.2006年の胸部単純X線写真で右第二弓の拡大を認め,胸部CTで右中縦隔に腫瘤影を指摘された.2013年5月,腫瘤影の増大を認め当科紹介となった.胸部造影CTで,辺縁に造影効果のある内部不均一な径75 mmの腫瘤を認め,胸部MRI(T2強調画像)で,腫瘤内部に高信号と低信号の混在を認めた.臨床経過と画像所見より,chronic expanding hematoma(CEH)と診断した.増大傾向のある腫瘤であり,悪性腫瘍の可能性が否定できなかったため,手術による腫瘤摘出を行った.縦隔側腫瘤被膜と心膜との癒着は強固であり,腫瘤被膜を一部心膜側に残す形で腫瘤を摘出した.最終病理診断はCEHであった.術後経過は良好で,術後286日目の胸部CTで胸腔内にCEH再発所見を認めていない.