日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
肺動脈カテーテルによる肺動脈損傷の1例
東山 将大竹中 裕史川崎 成章石黒 太志重光 希公生横山 幸房
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2017 年 31 巻 6 号 p. 709-716

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抄録

症例は72歳,女性.僧帽弁閉鎖不全症に対する術前の肺動脈カテーテル(pulmonary artery catheter,以下PAC)検査中,突然喀血,血圧低下を呈した.患者はすぐに挿管,片肺換気下に置かれ,血管作動薬が投与された.造影CTと肺動脈造影で右下葉枝(A8)からの大量の造影剤の漏出と気道内,胸腔内への出血が認められた.輸液や輸血のポンピングを行いながら患者を速やかに手術室へ運び,迅速な麻酔導入と開胸手術を開始した.胸腔内から血液が大量に湧き上がり,右中下葉は血腫で満たされていた.肺門を血管鉗子でクランプして出血を制御したが,心停止となったため,蘇生術を行いつつ,体外式心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support,以下PCPS)を導入し,中下二葉を可及的速やかに切除した.患者の血行動態は安定し,術直後にPCPSから離脱することができた.術後は中枢神経症状や再出血を認めず,心臓呼吸リハビリテーションの後,独歩退院した.PACによる肺動脈損傷は稀であるが,しばしば致死的な合併症である.大量出血が制御されない場合,救命のために手術をためらうべきではない.さらに,肺動脈血流を減少させうるPCPS導入などを含めた他科他領域職種との連携が救命には不可欠であろう.

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