2017 年 31 巻 6 号 p. 789-793
症例は64歳男性.微熱,全身倦怠感あり,近医を受診した所,白血球数が82500/μlと著明に増加していたため,当院血液内科に紹介された.骨髄所見より急性骨髄性白血病と診断し,寛解導入療法を施行した.完全寛解となったが,発熱,咳嗽,血性痰,胸痛が出現し,胸部X線,胸部CT検査で左肺炎,肺真菌症を疑った.喀痰培養,気管支鏡検査では起炎菌は同定されなかった.抗生剤,抗真菌剤の投与にて症状,炎症所見は改善した.しかし,胸部CT検査にて左肺下葉に空洞を有する4.9 cm大の腫瘤が残存した.次に地固め療法の予定であったが,炎症の再燃の可能性が高かったため,左肺下葉切除術を施行した.術後病理組織検査では肺ムーコル症の診断であった.術後経過は良好で地固め療法を行い退院した.その後,急性白血病の2回の再発があり,化学療法施行後,完全寛解となった.現在,術後4年8ヵ月経過したが,肺ムーコル症の再燃は認めていない.