日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
肺癌術後Novel Oral Anti Coagulants(NOAC)内服による胸腔内出血が疑われた一例
福井 麻里子鈴木 健司松永 健志平山 俊希高持 一矢王 志明
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2017 年 31 巻 6 号 p. 823-827

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抄録

72歳男性.右肺癌(扁平上皮癌)c-stageIIIAに対し右中下葉切除を施行した.

術後,肺瘻遷延のため胸腔ドレナージを継続していたが心房細動に対して第5病日夕よりアピキサバンの内服を開始したところ第6病日昼に胸腔ドレーンから血性排液の排出を認めた.

アピキサバン中止後徐々に出血量は減少.第10病日にアピキサバン内服を再開した.再出血は認めなかったため肺瘻の消失を確認し第15病日にドレーンを抜去した.その後臨床所見,CT所見ともに再出血を疑う所見はみられていない.

新規抗凝固薬(Novel Oral Anti Coagulants;NOAC)の普及が進み,周術期の使用も増えている.内服量の調整が不要であること,従来の抗凝固薬に比し出血のリスクが低いと報告されていることから術後使用におけるメリットも大きい.しかし本症例のように内服開始後に出血をきたす症例も存在する.検査でのモニタリングがない分,臨床的に再出血の有無の評価を行うことが重要である.

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