日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
症例
左腕頭静脈合併切除・再建を要したtype A浸潤性胸腺腫の1例
久保 友次郎藤原 俊哉岡田 和大中村 龍二岡田 真典松浦 求樹
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 34 巻 5 号 p. 341-347

詳細
抄録

WHO分類type A胸腺腫は低悪性度な腫瘍で,境界明瞭で非浸潤性の像を呈することが多いとされている.症例は60歳代,女性.検診で胸部異常陰影を指摘された.画像精査で6 cm大の前縦隔腫瘍を認め,左腕頭静脈浸潤が疑われた.CTガイド下生検にてtype A胸腺腫と診断された.術前診断は浸潤性胸腺腫,type A,cT3N0M0 Stage IIIA,正岡分類III期とした.術前化学療法を施行したがstable disease(SD)であった.手術は胸骨正中切開で胸腺腫摘出,左腕頭静脈合併切除,左腕頭静脈―右心耳バイパスを施行した.病理組織学的検査で左腕頭静脈浸潤を伴う胸腺腫,type A,ypT3N0M0 Stage IIIA,正岡分類III期と診断した.患者希望により追加治療は行わなかった.現在術後1年4ヵ月経過し,無再発,経過観察中である.Type A胸腺腫でも大血管浸潤を呈することがあり,慎重な術式選択が重要である.

著者関連情報
© 2020 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top