抄録
顆粒球減少症を呈した悪性胸腺腫の患者に上大静脈再建を含む腫瘍摘出術を施行した、胸腺腫の組織型は混合型であった.術後ステロイド経口投与のみで, 顆粒球減少症は自然寛解を示した.経過観察中に胸腔内胸壁に再発を認め, 気管支動脈内にCDDP投与で寛解をみた.術後33ヵ月目に胸腔内腫瘍増大と赤芽球癆 (PRCA) を呈し, 輸血とステロイド投与とCDDP動脈内投与で腫瘍の縮小と骨髄像の改善が認められた.術後46ヵ月で呼吸不全により死亡したが, 剖検で悪性胸腺腫の胸腔内播腫が認められた.悪性胸腺腫のPRCA合併例は本邦で17例目で, 胸腺腫摘出後PRCAを呈したのは, 本邦6例目である.本例は術前には顆粒球減少症を示し, 術後経過観察中にPRCAを呈したことより, 胸腺腫と血球分化の過程に何等かの関わりが示唆されうる症例と思われる.