日本呼吸器外科学会雑誌 呼吸器外科
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  • 西村 秀紀, 青木 孝學, 矢満田 健, 小林 理, 羽生田 正行, 森本 雅巳
    1992 年 6 巻 4 号 p. 432-439
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺癌の治療成績は不良であるが, そのなかで比較的予後良好なTIN0M0肺癌の手術成績について検討した。当教室で切除されたT1N0M0肺癌73例の5年生存率は80.8%であった.組織型別では扁平上皮癌の方が腺癌より若干予後良好であり, 特に肺野型扁平上皮癌では癌死はなかった.手術根治度では絶対的治癒切除の方が相対的非治癒切除より若干予後良好であり, 扁平上皮癌の絶対的治癒切除では癌死はなかった.腺癌で絶対的治癒切除を行った29例中7例 (24%) に再発・転移を認めた.そのなかで腫瘍経が20mm以下の肺野型早期腺癌では, 絶対的治癒切除をなし得た12例中2例に癌死が認められた。T1N0M0扁平上皮癌では絶対的治癒切除により治癒が期待できるが, T1N0M0腺癌では絶対的治癒切除を行っても再発・転移を20~30%に認めるため, より有効な補助療法の確立が必要と考えられた.
  • 手術適応を中心に
    村岡 理人, 成毛 韶夫, 中井 秀典, 土屋 了介, 呉屋 朝幸, 近藤 晴彦, 松野 吉宏
    1992 年 6 巻 4 号 p. 440-445
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    1977年2月から1991年8月までに国立がんセンター病院にて切除された肺過誤腫35症例について手術適応を中心に検討した.肺過誤腫単独例が30例, 胸腺嚢腫との合併例が1例, 肺癌との合併例が2例, 転移性肺腫瘍との合併例が2例であった.術前診断として肺針生検もしくは気管支鏡下擦過細胞診施行例の約17%に軟骨組織が認められ, 肺過誤腫と診断された.施行術式は核出・部分切除例が約78%を占め, 腫瘍径が大きいと術式が拡大する傾向が認められた.術後合併症は肺癌に比較して少なかった.肺過誤腫に対する外科切除は, 明らかに肺過誤腫と診断される症例に対し直ちに行うことは疑問だが, 悪性腫瘍との鑑別が困難な例, 症状を有する例, 増大傾向を示す例, 合併病変のある例, 患者が切除を希望する例では適応となり, 効果的かつ安全な治療法であると考える.
  • 宗岡 克樹, 辻 隆之, 菅 伊知郎, 徳野 慎一, 戸川 達男, 青木 秀希, 奥森 雅直
    1992 年 6 巻 4 号 p. 446-452
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    セラミックスを人工気管と生体気管の吻合部の素材として応用するための検討を行った.使用したセラミックスはハイドロキシアパタイトの緻密体とチタンにアパタイトをプラズマコーティングしたものである.常在菌の存在する気管内での組織親和性の優れたセラミックスは人工気管と生体気管との接合部に利用することが可能であると思われた.実際の人工気管として応用するためには, シリコーンチューブの両端にサイズの異なるアパタイトコーティングチタン中空管を内挿入固定する方法が最適であると考えられた.その人工気管を使用して雑犬頸部気管6軟骨輪切除後管状置換したが, 置換後665日現在気道狭窄等の合併症は認めていない.
  • 神楽岡 治彦, 川名 英世, 田原 士朗, 板岡 俊成, 大貫 恭正, 横山 正義, 新田 澄郎
    1992 年 6 巻 4 号 p. 453-459
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    漏斗胸手術の運動負荷時呼吸機能に及ぼす影響について検討した.漏斗胸患者11例の術前および術後6ヵ月に安静時呼吸機能検査, ランプ負荷による運動負荷試験, 呼気ガス分析を施行した.最大運動時には, 手術前後でそれぞれVo2/body weight : 34.1±4.3, 33.6±3.3l/kg/min, VE/body weight : 1075±220, 1232±215ml/kg/min, VT/body weight : 26.0±3.1, 27.0±3.4ml/kg, 02-Pulse : 10.4±3.3, 9.9±2.3ml/beatであり有意差は認められなかった.anaerobic thresholdおよび他の諸量にも術前後の値に差は認められず, 漏斗胸手術後の重要な課題である運動負荷時呼吸機能は, 術後6ヵ月には, 術前と同じ状態にあることが示された。また, 胸肋挙上術と胸骨翻転術の術式による術後の運動負荷時呼吸機能に差異は見られなかった.
  • 加勢田 静, 西村 嘉裕, 酒井 忠昭, 池田 高明
    1992 年 6 巻 4 号 p. 460-465
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    28例の肺癌脳転移症例に対し, 原発巣の切除と脳転移巣の切除を行った.28例全体の5年生存率は13%であった.組織型別では, 大細胞癌の予後が良好で, 2例が61ヵ月と110ヵ月生存中である.脳の切除を先行した症例が18例, 肺の切除を先行した症例が10例あったが, 何れの群も5年生存率は13%であった.開頭術中照射を行った症例が12例あった.うち, 7例は開頭術中照射後, 全脳照射を併用し, 5例は開頭術中照射のみ行った.5年生存率はそれぞれ, 16.7%と33.3%であり, 全脳照射は必ずしも必須であるとは言えなかった.また, 全脳照射群では, 脳萎縮痴呆化などの放射線障害が高頻度にみとめられたが, 開頭術中照射のみ行った群では, このような副作用はみられなかった.したがって, 脳転移切除後, 開頭術中照射のみを行うと, 予後の改善が期待できるだけでなく, 全脳照射を行った症例, とくに高齢者で発生しやすい精神機能障害を回避できるものと思われた.
  • 横隔膜上3cmでの一次的縫合について
    小林 淳, 河原崎 茂孝, 水野 浩, 千原 幸司, 人見 滋樹
    1992 年 6 巻 4 号 p. 466-474
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸部外科術後の横隔神経麻痺は, 呼吸機能の損失を惹起し, 重大な合併症を引き起こす.そこで, 横隔神経も他の末梢神経と同じように再建できることを確認し, 再建が可能ならば, 再生過程を知ることを目的として, 雑種成犬の左横隔神経を横隔膜上3cmで切断し, 直ちに一次縫合する実験を行った.横隔神経刺激と横隔膜筋電図によって, 手術後8週間目から横隔神経伝導の回復が確認された.神経伝導速度や, M waveの振幅の神経機能は術前と変わりがなかった, 神経再生速度は一般の末梢神経とほぼ合致した.これらより横隔神経も他の末梢神経と同じように, 神経外科手術の対象になると考えられ, 必要があれば横隔神経損傷は再建を試みられるべきである.実際の臨床例の多くは, ある長さの横隔神経の欠損を伴う.欠損を補填するためには, 神経移植術や神経移行術に適応の可能性があり, 今後の検討を要する.
  • 東条 尚, 飯岡 壮吾, 根津 邦基, 櫛部 圭司, 澤端 章好, 北村 惣一郎
    1992 年 6 巻 4 号 p. 475-480
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    聴診三角アプローチによる開胸法では胸壁筋肉を切離せず骨性胸郭に達し, 筋肉組織を切離しない開胸手術が可能である.1987年8月~1990年8月の間に自然気胸27例, 巨大ブラ7例, 肺癌3例, 肺癌疑い2例, 開胸肺生検4例の43例 (年齢15~77歳, 平均41.1歳) に対して本法による開胸手術を施行し, その成績を検討した.胸膜癒着を自然気胸の11例, 巨大ブラの3例, 開胸肺生検の2例に認めたが, 1例を除き全例所期の目的が達成できた.また, 腋窩開胸法との開胸法別成績比較を若年者自然気胸手術例で行った.本法例 (n=15) は術直後から術側上肢の挙上が可能であり, 腋窩法例 (n=22) は挙上困難を示した.術後1ヵ月後の% FVCは腋窩法例で73.5±8.1%に対し本法例のそれは85.2±12.8%で手術侵襲による呼吸障害度はより少なかった.自然気胸, 巨大ブラ, 開胸肺生検や肺癌疑いの診断確定目的, 部切が適応となる末梢小型肺癌例では本法は侵襲の少ない開胸法として評価できると考えられた.
  • 堀口 倫博
    1992 年 6 巻 4 号 p. 481-490
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺移植において, 移植後早期の大きな問題点とされている再灌流障害に対する Urinary Trypsin Inhibitor (UTI)の効果につき実験的に検討した.雑種成犬で左肺の温阻血モデルを作成し, 温阻血時間, 再灌流時間は2時間とした.コントロール群と UTI群に分け, UTI群には再灌流時に1万単位/kgのUTIを投与した.コントロール群は, 再灌流終了時において肺血管抵抗, 肺湿乾燥重量比共に有意に上昇し, 病理組織でも間質の肥厚および好中球の浸潤が認められ, 生存実験では7日間以上生存したのは5例中2例のみであった。それに対し, UTI群では, 肺血管抵抗は軽度の上昇がみられたが肺湿乾燥重量比は有意な上昇はなく, 病理組織でもほとんど変化が認められず, 生存実験で5例全例が7日間以上生存した.以上より UTIが肺の再灌流障害を有意に抑制することが示された.これは, UTIの好中球プロテアーゼ阻害作用によるものと考えられる.
  • 平田 敏樹, 呉 俊雄, 和田 洋巳, 人見 滋樹
    1992 年 6 巻 4 号 p. 491-496
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    小児に発症した肺炎症性偽腫瘍を経験したので報告した.症例は6歳, 男児で小学校入学時の検診で胸部X線上右上肺野に結節影を指摘された.胸部X線, 胸部 CT, 気管支鏡にて診断がつかず, 確定診断も兼ねて右肺上葉切除を施行した.腫瘤は径2cmの大きさで, 組織学的には紡錘形の間葉系細胞の増殖に加え形質細胞, 組織球, xaithomatous cellの出現を認めた.免疫組織学的染色では腫瘍内の形質細胞は IgG, IgMおよ びκ, λ light chain陽性の細胞がそれぞれ存在しており, 多クローン性を示したことより plasma cell granulomaと診断された. plasma cell granulomaは近年報告例が増加しつつあり, 特に小児で胸部X線上結節影が認められた場合考慮すべき疾患と思われた.切除範囲は最小限にすべきだが, 術中の確定診断が困難であるため病変は遺残することのないように留意すべきと考えられた.
  • 宮澤 秀樹, 荒井 他嘉司, 稲垣 敬三, 森田 敬和, 矢野 真, 佐藤 秀之, 野村 友清, 竹内 茂, 原 敏彦, 飯尾 正明
    1992 年 6 巻 4 号 p. 497-502
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    従来の胸部X線写真やCTで癌局在診断に難渋した肺癌の2例に対し, 11C-メチオニンを用いたPET (Positron Emission Tomography) で診断を試みた.PETにおける空間分解能の改善と解剖学的位置関係の把握を目的として, 呼吸波同期scanとpositron angiographyを併用した.症例1は肺癌切除後残存肺の化膿症との同一部位にみられた二重癌で, 肺癌と炎症部位との鑑別が困難であった.症例2は術後再発肺癌で, 手術による影響で肺門・縦隔の構造が不明瞭であり, 縦隔リンパ節転移の診断に難渋した.2例とも本検査法により原発巣および転移リンパ節が明瞭に描出され, 腫瘍組織と炎症組織との関係や, 縦隔大血管との解剖学的位置関係が容易に把握でき, 手術適応の決定に極めて有効であった.
    11C-メチオニンを用いたPETは, 従来のX線検査では判別し難い症例の診断に, 有効な検査方法であると考えられる.
  • 田中 文啓, 北野 司久, 辰巳 明利, 黄 政龍, 長澤 みゆき, 山中 晃
    1992 年 6 巻 4 号 p. 503-508
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸部レントゲン写真では無気肺様陰影を呈し, 開胸術にて胸腺肥大と診断された一例を経験したので報告する.症例は1歳2ヵ月の男児で, 右上葉無気肺を示唆する胸部異常陰影の精査治療目的で当院入院となった。気管支内に異物・腫瘍を認めないため経過を観察していたところ, 化膿性髄膜炎を起こした.右上葉が感染源と考えて開胸術を施行したところ, 異常陰影は右胸腔内に突出した肥大胸腺と判明した.小児の胸部レントゲン写真で無気肺様陰影を認めたときは, 肥大胸腺陰影も考慮するべきと反省させられた.
  • 綾部 公懿, 岡 忠之, 辻 博治, 原 信介, 田川 泰, 川原 克信, 富田 正雄
    1992 年 6 巻 4 号 p. 509-514
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の男性で胸部X線上左上肺野に6×3.2cm大の腫瘤影を指摘され, 肺扁平上皮癌と診断された.慢性気管支炎の合併があり, 術前の呼吸機能検査上肺活量は2.54l (% VC 85%) であったが, 1秒量は0.82l(1秒率33.3%) と高度の閉塞性呼吸障害がみられた.気管支鏡検査上左B3に癌浸潤の所見が認められた.肺機能上, 縮小手術の適応と考えられたので, 左上葉気管支管状切除後, 左上葉気管支と下区域気管支の端々吻合による気管支形成術を併用し, 左上葉上区の区域切除術を施行した (扁平上皮癌T2N0M0 Stage I).術後2年6ヵ月の現在再発なく健在である.
    区域支に癌浸潤の及ぶ肺癌例に対しては通常は区域切除術の適応はないが, 気管支形成術を併用することにより区域切除を施行しえた高度閉塞性呼吸機能障害合併肺癌の1例を報告した.
  • 鈴木 洋人, 山口 豊, 藤野 道夫, 柴 光年, 光永 伸一郎, 藤沢 武彦
    1992 年 6 巻 4 号 p. 515-520
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺原発の悪性線維性組織球腫 (Malignant fibrous histiocytoma, MFH) の1手術例を経験したので報告する.症例は67歳男性, 健診にて胸部X線写真上異常影を指摘され, 右S6に腫瘍を認め, 右下葉切除術を施行.切除標本では腫瘍は34×40×25mmで胸膜直下に存在した.病理組織所見ではstoriformpatternを認め, 一部に骨形成が見られた.抗α1-antitrypsin抗体による免疫染色にて陽性所見を示した.他に原発巣を認めず肺原発MFHと診断した.肺原発MFHは軟部組織原発のものに比較し稀であり, 本邦での報告例は19例であった.術後1年を経過し, 再発転移を認めていない.
  • 北見 明彦, 鈴木 隆, 堀 豪一, 武士 昭彦, 三本松 徹, 須原 誠, 小久保 武
    1992 年 6 巻 4 号 p. 521-526
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は2歳11ヵ月の男児.出生時特に異常所見はなかったが, 生後3ヵ月の胸部単純X線写真で右上縦隔の拡大を指摘された.その後右上葉無気肺, 肺炎等の呼吸器症状が出現し入退院を繰り返した.胸腺肥大の疑いでステ獄イド負荷療法を2回施行したが, いずれも無反応であった.
    2歳9ヵ月時, 胸腺腫の疑いで手術を施行した.び漫性に肥大した胸腺を認め胸腺全摘除術を施行した.摘出した胸腺は大きさ10×7×6cm, 重さ210gであった.病理組織は正常胸腺構造を呈し, 観察した範囲内に胚中心の形成はみられなかった.最終診断はTrue thymic hyperplasiaとした.
  • 早川 正宣, 中岡 和哉, 塩野 裕之
    1992 年 6 巻 4 号 p. 527-533
    発行日: 1992/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 72歳女性.労作時呼吸困難を主訴に当院に紹介された.胸部X線上左下肺野に境界明瞭な腫瘤陰影を認めた.気管支鏡下の擦過細胞診と経皮針生検を施行したが, class IIIであった.肺癌の疑いが否定できないため, 手術を施行した.病理組織学的に, リンパ球の増生を認めた事と免疫組織化学的に浸潤するリコパ球がκ鎖, λ鎖の両方に染色されてpolyclonalityを示すとともに, L26 (Bリンパ球) とUCHL-1 (Tリンパ球) で染色され, Bリンパ球とTリンパ球が混在して腫瘍を構成していた事より, 反応性病変であるpulrnonary pseudolymphornaと診断した.ただ, 悪性リンパ腫との鑑別が困難で, 今後も厳重な経過観察が必要と思われる.術後17ヵ月現在再発徴候を認めていない.
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