日本呼吸器外科学会雑誌
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上大静脈完全遮断による血行再建を伴う胸部悪性腫瘍切除術の検討
金子 公一森田 理一郎鈴木 義隆中村 聡美菅 理晴尾本 良三
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1999 年 13 巻 4 号 p. 519-526

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抄録

上大静脈浸潤を伴う胸部悪性腫瘍切除術で上大静脈の完全遮断による合併切除, 血行再建を施行した8例を検討した.悪性縦隔腫瘍6例, 原発性肺癌2例で, いずれも病理組織学的に上大静脈浸潤を認めた.7例ではまず左腕頭静脈一右心耳間に人工血管でバイパスを作成し上半身の静脈還流を確保した後, 上大静脈を含む腫瘍の完全切除を施行し上大静脈も血行再建した.1例では奇静脈による上半身の還流が保たれ, 上大静脈完全遮断により左右腕頭静脈合流部一右心耳間にバイパスを作成してから右房の一部を含む上大静脈合併切除を施行し得た.8例15本のグラフトのうち4本が閉塞したが, 他の11本は開存していた.手術死亡はなく, 1例の入院死を含めて累積生存率は1年生存63%, 3年生存31%, 5年生存16%, 死亡例はいずれも遠隔転移による腫瘍死であった.本術式は左腕頭静脈一右心耳バイパスを先に作成することにより上半身の鬱血に配慮することなく安全に腫瘍と上大静脈の合併切除が可能であった.局所再発例はなく手術による局所コントロールは良好で, 5年生存例もあり積極的に施行しうる術式と思われた.

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