抄録
症例は34歳, 女性.Basedow病の治療中, 胸部X線写真で縦隔の異常を指摘された.胸部CTで胸腺の腫大を認め, 1ヵ月後のCT検査で, 胸腺はさらに増大していたことから悪性も疑われ胸腺摘除術を施行した.病理結果は胸腺過形成であり, Basedow病に伴う胸腺過形成と考えられ, 本来保存的治療の適応であった.また, 本例の胸腺をT1強調MRI画像を位相差法により処理したところ, 胸腺の信号強度が低下した.胸腺腫では位相差法により信号強度が変化しない.このことより位相差法を用いたMRIにより胸腺過形成と胸腺腫の鑑別ができる可能性が示唆された.