2000 年 14 巻 6 号 p. 694-697
症例は75歳の女性.他院での胸部X線写真上異常陰影を指摘され来院した.胸部CT上, 前縦隔に内部不均一で低吸収域を伴う腫瘍を認めた.胸腺原発の奇形腫を疑い, 胸骨縦切開による腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は12.0×7.5×2.5cmで被膜に覆われており, 割面は充実性で黄色部分と白色部分が混在していた.病理組織学的に胸腺脂肪腫と診断した.術後経過は良好で退院し, 4年経過した現在, 再発を認めない.胸腺脂肪腫は, 胸腺に原発する比較的まれな良性腫瘍であり, 本邦では59例の報告がある.自験例はCT画像上, 過去の報告例に比してCT値が高く, 術前診断に難渋したので, 文献的考察を加えて報告する.