日本呼吸器外科学会雑誌
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原発性非小細胞肺癌の PCNA 発現率で評価した腫瘍増殖能とリンパ節転移の検討
森田 克哉林 義信家接 健一清水 淳三村上 眞也小田 誠荒能 義彦徳楽 正人長尾 信矢崎 潮渡辺 洋宇
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1994 年 8 巻 7 号 p. 768-772

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抄録

原発性非小細胞肺癌切除65例に対し, PCNA発現率で評価した腫瘍増殖能とリンパ節転移との関連について検討を行い, 生物学的悪性度の指標としての有用性について考察した.PCNA標識率は, 手術材料を用いてflow cytometerにより複数部位で測定し, その平均値で評価した.腺癌36例中13例, 扁平上皮癌29例中5例にリンパ節転移を認め, その頻度は腫瘍径の増大にしたがって増加した.しかしPCNA標識率とリンパ節転移の頻度は相関を認めず, また腺癌では腫瘍径とも相関を認めなかった.腫瘍径が同一の場合, PCNA標識率が高値すなわちdoubling timeが短い方が発癌から発見までの期間が短かいと考えられ, 腺癌ではT1でかつPCNA標識率が高値のものでリンパ節転移を認めなかった.PCNA標識率は腫瘍の動的状態を反映すると考えられる増殖能を表しており, 癌のある時点での進行度を表すTNM分類とは独立した因子と考えられた.

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