抄録
われわれはきわめて稀な, 右房粘液腫を合併した肺癌の1例を経験したので報告する.症例は68歳男性で, 以前より労作時呼吸困難があり, 今回検診で胸部異常陰影を指摘された.画像診断では右下葉S6末梢に20×28mmの腫瘤陰影を認め, 気管支鏡下生検で腺癌と診断した.一方, 入院時心雑音を聴取したため心臓超音波検査を施行したところ右房内に76×50mmの腫瘤を認め右房粘液腫と診断した.右房粘液腫による右心不全や肺塞栓の危険性が高いと判断し, まず心臓手術を行った後, 二期的に肺切除術を行った.肺手術時に胸膜播種を広く認め非治癒切除となったが, 術中, 術後ともに血行動態は安定していた.現在退院後6ヵ月であるが胸水の増加を認めず, 外来にて経過観察を続けている.