抄録
患者は68歳, 男性.他院で肺癌に対し肺切除および縦隔への術中照射20Gyを施行されたが, 術後約3ヵ月で放射線食道潰瘍を発症.潰瘍は7ヵ月後には食道気管支瘻に発展し, 肺炎を併発したため, 手術から9ヵ月後に当科に紹介された.保存的治療を行うも諸症状は増悪したため手術を施行した.病変部近傍の食道は剥離が困難なため, 粘膜のみ切除した.潰瘍より下方の食道筋層を有茎筋弁として利用し, 瘻孔部に縫合してこれを閉鎖した.食道再建は二期的に行った.食道を温存できない状況での食道気管支瘻の処理には, 食道筋層を有茎筋弁として用いるのが有効である.縦隔に対する術中照射を行う場合, 20Gyの線量でも個体によっては高度の食道障害を生じる危険性があることを考慮して, 照射方法を設定する必要がある.