本稿は,「大学教育における質的研究の可能性」(研究期間:2020~2023年)の活動経緯を踏まえながら,成果報告の一環としてなされた課題研究シンポジウムにおける「趣旨説明」の内容をまとめて執筆するものである.趣旨説明では大学教育研究における質的研究法を,会員にとっての実用性という観点を踏まえて分析的に整理するという研究課題についてまとめ,報告した.また,大学教育を対象とした質的研究法の事例集の作成過程の一端について,座談会形式で議論する旨をあわせて報告した.これらを踏まえ,大学教育における質的研究の可能性について,今後質的研究法の普及に向けた取組の方向性を会員のニーズを踏まえて模索する意義と必要性について論じた.