沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
論文
AHP法を用いた地域振興に関する住民意識の構造分析 -北海道利尻・礼文地区における事例-
山崎 新但馬 英知田丸 修山下 成治
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2010 年 23 巻 2 号 p. 27-38

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抄録

要旨:北海道の離島地域である利尻町・利尻富士町・礼文町を対象として,問題解決型意思決定法のAHP手法により,各地域の潜在的課題と地域振興策の優先度の関係を求め,その地域差を考究した.既往調査から得られていた地域課題間の類似性を考慮し,3層の課題分類と代替案からなる階層構造を設定し,一対比較表を作成してアンケートを実施した.この結果,地場産業振興と生活安全推進に関連する項目が,すべての地域に共通する主要施策要素として抽出できた.要素間の重みづけには顕著な差異が見られ,利尻町および利尻富士町では前者が,礼文町は後者が重要視されていることがわかった.地理的に極めて近接した位置関係にあり,その発展過程に差が見られないと予測された島嶼地帯においても,各個の歴史的背景や地勢的特徴の違いが地域振興施策への優先度の違いとして顕れたと考えられる.今後の地域振興計画の立案と実施においては,このような潜在的な住民意識と,その背景にある歴史的・地勢的・経済的な特徴を踏まえた上で,地域が独自に持つ「強み」を地域資源として発掘・整理しておくことが重要な課題になると推察された.

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© 2010 日本沿岸域学会
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