2015 年 28 巻 3 号 p. 107-118
要旨:本論文は,日本における里海管理組織の構造と機能について,アンケート調査結果から課題探索のための予備的検討を行うものである。現在,日本において多数の里海づくりが行われているが,その管理組織については明らかにされておらず,全体像も把握されていない。そこで,これらを明らかにするために,文献調査と2種類のアンケート調査を行った結果,沿岸域管理の取組み件数については,各種文献に掲載されている事例と著者らによる都道府県アンケート結果から合計232件と推計された。一方,都道府県アンケートからは103件の事例情報を収集した。これによると,市町村,都道府県,漁協,国,NPOのいずれかあるいは複数が中心団体となって,行政,漁協,漁業者が正会員として,地元住民団体,環境保護団体,海洋レク団体が必要に応じて参加する協議会形式で管理を行うとのいうのが,管理組織の標準形として推測された。事例アンケートからは,事務局の勤務形態と活動の成果との間に有意な関係が見られた。