2017 年 30 巻 2 号 p. 61-73
要旨:沿岸域は生産性の高い生態系が含まれるが,人間活動も活発であるため人為的な環境改変の影響を受けている。沿岸域の生態系サービスを持続的に利用するためには,保全や生態系サービスの活用方法を考慮した,自然と共生する社会の構築が求められる。本研究では,沿岸域の生態系サービスの利用形態が多様な石西礁湖周辺地域において,生態系や生態系サービスに対する人々の関心と保全活動に対する意識に関するアンケート調査を実施した。生態系サービスのうち,供給サービスへの関心の低いステークホルダーは,海の生態系に対する関心も低い傾向にあった。保全活動に対する満足は,ステークホルダーに関係なく低かった。海洋生態系の保全について議論する場においては,ステークホルダー間での関心の差を考慮したうえで,生態系に関する情報共有を行うことが重要であると考えられた。