2017 年 30 巻 3 号 p. 29-41
要旨:地域活性化方策の一つとして移住者の受入れ促進の有効性が一般的に認められているが,沖縄においては移住者増加は先住者らとの軋轢も生じさせていることが報告されてきた。そのような中で現代沖縄村落の発展方策を検討していく際,実際に地域に居住する移住者を含む住民たち自身が共同体をどう認識しているかを理解することなしには,理想的な方策の議論を進めることは難しい。そこで本稿は地域住民たちの視点による「共同体像」を自由記述法の質問を用い実証的に明らかにし,それにより移住者の地域融合のために重要な要因について提言することを目的とした。石垣島白保地区を対象地とし,得られたデータを量的・質的にテキスト分析した結果,住民たちにとっての理想の共同体像とは「生活・自然環境」「文化・伝統」を持続・発展させていくために「地域自治能力」と「人づきあい」がよく機能している状態であることを示した。この結果に基づき,移住者の地域融合にとって重要な要因について提言した。