2024 年 36 巻 4 号 p. 57-68
港湾物流に係る各種手続を効率化するため,手続データを一元的に交換・共有する情報システム(Single Window:SW)が存在する。本稿では,港湾物流分野におけるデジタル先進国の韓国・シンガポール・オランダを対象として,SWの設置およびSW間のデータ連携状況を調査・分析し,各国内のSW構成に関する国際比較を実施した。これに基づき,わが国SWの世界的な位置づけを分析し,次の点を明らかにした。1)わが国は調査対象国と同様に,各種港湾物流手続に対応したSWを設置している。2)民民間手続に係るSWの設置時期は調査対象国より遅かった。3)SW間における今後のデータ連携計画も踏まえると,数年以内に各種SW間でのデータ連携の状況は調査対象国と同等になると予想される。4)民民間手続に関するSWの利用状況は調査対象国と比べて低い。さらに,考察の結果,次のとおりわが国SW施策への示唆を得た。①SW間の役割分担に基づく機能整理を検討すべきである。②民民間の港湾物流手続を対象とするSWと,官民間の船舶入出港関連手続を対象とするSWとのデータ連携の実装については検討に値する。③グローバルなコンテナ位置・手続状況情報の提供に向けた,外国SWとのデータ連携は有用と考えられる。