2025 年 19 巻 2 号 p. 117-123
日本の薬学教育において,基礎科学科目と臨床との繋がりを意識づける分野横断型教育にチーム基盤型学習(TBL)を導入した事例はごく限られている。本研究では,初年次の分野横断型教育におけるTBL方略の有用性を明らかにすることを目的とした。コース終了後にアンケート調査を行い,探索的因子分析と階層型クラスター分析により3群を分類した。A群は,グループワークが他の群よりも苦手である群,B群は,自己学習が苦手である群,C群はTBL方略に対して有用性を強く感じた群となった。薬学への興味向上および授業に対する総合評価に対する各群の回答分布では,C群がA,B群に比べて高い評価を示した。本研究結果は,初年次分野横断型教育において,臨床に繋がる課題が設定されたTBL学習が,受講者の学習内容の理解と薬学への興味の促進に繋がることを示した。その一方で,個人で行う事前学習への負担やグループワークへの消極性が学習効果を妨げる可能性も示唆された。