デジタル・ヒューマニティーズ
Online ISSN : 2189-7867
論文
童謡の旋律における「子どもらしさ」の表現方法の抽出
河瀬 彰宏髙木 優貴
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ジャーナル オープンアクセス HTML

2020 年 2 巻 p. 3-

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Abstract

日本の伝統音楽の基盤であるわらべうたは,子どもが遊びの中で創作した自然発生的な音楽である.わらべうたと類似した音楽に童謡がある.両者の音楽は子どもに親しまれているが,童謡は大人が子どもに親しんでもらう明確な意図のもとで作曲された音楽という点でわらべうたと異なる.本研究では,子どもたちが自然な感覚で創作したわらべうたの旋律的特徴のことを「子どもらしさ」と定義し,童謡の旋律がもつ「子どもらしさ」の表現方法を計量的に明らかにした.わらべうた,童謡,同時代の日本の流行歌の旋律から音程と音価を抽出し,それらを特徴量とする計量比較を実施した.3者の共通点と相違点を明確に説明する特徴量を考察することで,童謡の旋律がもつ「子どもらしさ」が限定された範囲内での音程推移と跳躍のあるリズムの組み合わせによって作られていることが明らかになった.

Translated Abstract

Warabe uta (children's songs), the foundation of traditional Japanese music, comprises melodies that are spontaneously created by children during play; douyou (nursery rhymes) is also a similar music genre. Although both genres are associated with children, douyou is different from warabe uta as these melodies are composed by adults with the explicit intention of attracting children. In this study, we define “childhood” as the childlike feature of warabe uta naturally created by children. Information on pitch interval and note length was extracted from melodies of warabe uta, douyou, and popular Japanese songs of the same era; these features were used to perform statistical comparisons. Thus, by examining the features that elucidate the commonalities and differences among the music genres, this study clarifies the “childhood” hidden in douyou melodies.

1 はじめに

子どもの音楽である童謡は,広義に解釈すると伝承童謡と創作童謡に分類される.町田・浅野(1962)によれば,日本の伝承童謡であるわらべうたは,子ども同士の集団の中から自然発生的に作り出される音楽であり,その発生年代,作曲者,作詞家は特定することができない.わらべうたは,遊びを出発点としており,遊戯を面白くすることが歌の主たる目的であるため,歌詞の内容そのものは重視されずに創作されているという.その一方で,日本の創作童謡(一般に童謡と呼ばれる音楽であり,以下,童謡とする)の多くは,わらべうたの旋律を原型としている.1918年の『赤い鳥』創刊を起源として,明治時代の国家主義的な色彩を帯びて作曲された難解な歌詞をもつ学校唱歌への批判から登場した背景があったとされている [1]

このように,わらべうたと童謡の創作上の違いは,子どもが遊びの中で自ら楽しみながら作ったものか,大人が子どもの空想・情緒を想像して作った人為的な作品であるかという点にある.その一方で,わらべうたと童謡には,子どもが親しみを憶える表現が工夫されているという共通点があるものの,その表現方法の性質は異なる.はたして,子どもが親しみを憶える童謡の表現方法には,わらべうたとどのような共通点があるのだろうか.

2 関連研究

これまでに日本の伝統的な音楽を対象とした比較分析は,音楽学,民俗学,教育学などの人文科学の領域を中心に展開されてきた.

若井(2017)は,童謡とわらべうたの歌詞を比較し,両者の歌詞の背景・性格が異なることから,相互の歌詞に類似性がないことを明らかにした.また,わらべうたにおける「子どもらしさ」の表現は,集団で羽付きや手鞠の遊びを行う際に遊戯を楽しむために,旋律,リズム,言葉を一致させる工夫にあること,童謡における「子どもらしさ」の表現は,歌詞による親しみやすさを目指した工夫があることと考察した [2].谷(2014)は,比較文学の方法論から唱歌と童謡の歌詞を対比させ,童謡の歌詞について,詩のリズムだけでは子どもの心に訴えるような躍動感が生まれないため,詩だけでなく旋律の果たす重要性についても指摘している [3].これらのことから,童謡が子どもに親しまれた要因について,歌詞の側面よりも,旋律がもつ特徴にあると考えられる.

音楽学では,古くから旋律と音楽文化の関連や変遷を探ることを目的として,フィールドワークと文献調査を複合させた人文学的手法が主流であった [4] [5].しかし,従来研究では,対象が特定の作品や人物など局所的になり,方法論に再現可能性を担保しにくい問題があった.この問題を克服するアプローチとして,現在は音楽のデータベース化と計量分析が行われている [6]

日本の伝統的な音楽については,Savage and Atkinson(2015)による 26 曲のイギリス民謡と日本民謡を用いた旋律の系統分類 [7]や,日本民謡と中国民謡の旋律の比較分析を実施したKawase and Tokosumi(2010) [8]を除けば,ほとんど実施されていない.高際ら(2013)は,1868年から1949年までの日本の流行歌604曲に対して,N-gramを用いた音程推移の年代比較を実施し,西洋音楽の要素が日本音楽における半音の使用増加に影響を与えたことを明らかにした.同時に,N-gram表現による楽曲間の比較分析によって旋律の変遷・作者の特徴抽出の有効性を示した [9].日本音楽のリズム研究については,小泉(1969)がわらべうたに出現するリズムパターンを24種の基本形に整理した [10].このリズムパターンに基づき,疇地(2007)は,J-POPにおけるリズムパターンの変遷を考察し [11],二宮(2017)は,わらべうたにおける言葉とリズムの配分を考察した [12]

以上のように,子どもに親しまれる童謡がもつ表現方法について,歌詞の側面に着目した分析は実施されており,わらべうたの歌詞との関連性がないこと,学校唱歌との比較により,童謡の旋律が重要な働きを担っていることが明らかにされてきた.また,わらべうたや童謡の旋律に対して,計量的なパターンの抽出は個別に行われてきたが,他ジャンルとの比較から,大人が創作した童謡の旋律がもつ「子どもらしさ」の特徴は明らかにされてこなかった.

これらの先行研究に基づき,本研究では,子どもたちが自然な感覚で創作したわらべうたの旋律的特徴を「子どもらしさ」と定義し,童謡の旋律,わらべうたの旋律,童謡が創作された同時代の流行歌の旋律との比較分析を実施することで,童謡がもつ「子どもらしさ」の表現方法の特徴を計量的に明らかにする.具体的には,童謡,わらべうた,流行歌の3つの音楽ジャンルの楽曲コーパスを構築し,旋律の特徴量として音程推移と音価推移を抽出する.抽出した特徴量に対して,判別分析を実施し,3つのジャンルの共通点と相違点を明確に説明する特徴量を考察する.

3 データの概要

本研究では,童謡の旋律的特徴を明らかにするために,『日本童謡民謡曲集(正・続)』『日本わらべ歌全集』『日本のうた』の各曲集に収録された楽譜を分析対象とした.3つの曲集における掲載楽曲数と本研究における使用楽曲数の関係はTab. 1.のとおりである.ここでは各曲集の概要とその選定理由について説明する.

Tab. 1. 掲載曲数と使用楽曲数

Tab. 1. Number of songs

Tab. 1.
ジャンル 曲集名 掲載楽曲数 使用楽曲数
童謡 日本童謡民謡曲集 787 367
わらべうた 日本わらべ歌全集 8,760 4,098
流行歌 日本のうた 552 328
合計 10,099 4,793

3.1 『日本童謡民謡曲集(正・続)』

『日本童謡民謡曲集』は,広島高等師範学校付属小学校音楽研究部が日本全土から創作童謡・民謡を採録・編纂した歌曲集である.本曲集は,1933年に目黒書店より出版されたのちに絶版となっており,本研究では1978年に柳原出版より復刻された同曲集を用いた.なお,柳原出版による『日本童謡民謡曲集』の紹介文には「伝承童謡・民謡を集め編纂して出版した」と記載されているものの,序文を含む本文中には「伝承童謡」の記載がなく,昭和8年(1933年)に書かれた序文には,編纂・出版の経緯として学校唱歌への批判を行っている.これは,本論文の冒頭で引用した町田・浅野(1962) [1]が指摘している創作童謡が学校唱歌への批判から登場したという背景と重なるものであり,本研究では『日本童謡民謡曲集』を創作童謡,すなわち童謡の曲集として用いた.

本曲集は,全国で歌われる童謡の楽譜だけでなく,付帯情報として歌詞,採録地,採録者などが記録されているため,楽曲の由来を保証する信頼性の高い資料である.本研究では,正編と続編に収録され計787曲のうち,童謡として分類・収録された全367曲を分析対象として扱った.

3.2 『日本わらべ歌全集』

『日本わらべ歌全集』は,日本全土において継承されてきたわらべうたのうち,明治期から昭和期にかけて歌われたものに焦点を当てて収録した音楽資料集である.都道府県ごとに編纂された全27巻・39冊から構成され,1巻あたり108曲から317曲が収録されている.各巻に掲載された楽曲は,大きく12種目に区分されている:1.遊びのはじめに関する歌,2.手まり歌,3.羽根つき・お手玉歌,4.手遊び歌,5.鬼遊び歌,6.縄とび歌,7.外遊び歌,8.自然の歌,9.動物 植物の歌,10.歳事歌,11.ことば遊び歌,12.子守歌.本曲集は,「日本民謡に関して 現状もっとも信頼できる資料」 [13]と評される『日本民謡大観』と双璧をなす全集として評価を得ていること,研究目的を遂行するうえで量的にも質的にも再現可能性を担保できることがあげられる.本研究では,前述の町田・浅野(1962) [1]および若井(2017) [2]に基づき,上記12種目のうち,遊戯を面白くすることを重視した趣旨とし,遊戯を楽しむことを目的とした種目にあたる,1.遊びのはじめに関する歌,2.手まり歌,3.羽根つき・お手玉歌,4.手遊び歌,5.鬼遊び歌,6.縄とび歌,7.外遊び歌に区分・収録された計4,098曲を分析対象として扱った.

なお,沖縄県に収録された楽曲は,音律・リズム・種類に関して「他県との類歌をみない独自性をもつ」ことが『日本わらべ歌全集26 鹿児島 沖繩のわらべ歌』で指摘されている.また,北海道に収録された楽曲のうち,アイヌの楽曲については,他県と異なる種目(呪文,労働歌,遊び歌,クマ送りの歌,コタンの童戯)を設けており,「アイヌが和人と異なり,本来の狩猟民族であっただけに,その伝承歌謡,本書にとりあげたわらべ歌に関しても,本州各地のそれとは,おのずから相違がある」ことが『日本わらべ歌全集1 北海道のわらべ歌』で指摘されている.旋律とアイヌ語の歌詞の対応が他の地域と異なり,かつ,全国的規模で比較しても楽曲数が不足している.そのため,本研究では,沖縄県とアイヌの楽曲が分析時に外れ値となることから,分析対象から除外した.

3.3 『日本のうた』

『日本のうた』は,明治維新から2010年代までの日本の流行歌(日本歌謡曲・J-POP)を全8巻にわたって収録した楽譜集である.本研究では.前述した『日本童謡民謡曲集』における童謡の収録時期(1933年)と重なる楽曲群を分析対象とした.具体的には,『日本のうた』の第1巻(1868-1926年)と第2巻(1926-1945年)に収録された計552曲のうち,1933年までに流行した328曲を分析対象として扱った.

4 分析方法

4.1 音程および音価の抽出

本研究では,Tab.1.に示した全楽曲の楽譜に対して,楽譜作成ソフトのスコアメーカーZEROに搭載されたスキャン機能を用いて楽譜認識を行った.その後,楽譜作成ソフトのMuseScore3を用いて楽譜上に不足するデータを手入力し,2次チェックを経て,MusicXML形式に変換した.XMLパーサを通して<pitch>タグに含まれる音高データをMIDIノート番号(MIDI規格で定められた半音ごとに割り当てられた数字であり,基準音となる中央Aの音高は整数値69に対応される)へ変換した.そして,これを時系列に並べたベクトル X = ( x k ) k = 1 m を抽出した.ただし,要素 x k 𝒳 は,楽曲中の k 番目に現れる音符の音高を表し, m は任意の楽曲に含まれる音符の個数を表す. 𝒳 x k が取り得るMIDIノート番号(整数値)の集合である.

さらに, X 中の隣接する音高同士の差分 x k + 1 x k ( 1 k < m ) に着目し,各楽曲から音程データ(音高差)のベクトル T = ( t i ) i = 1 m 1 を抽出した.ただし,要素 t i 𝒯 の取り得る値は具体的な音程名称と対応する(e.g. Tab. 2.).

音高データと同様に,音価データを時系列に並べたベクトル R = ( r j ) j = 1 n を各楽曲から抽出した.ただし,要素 r j は,楽曲中の j 番目の音価を表し, n は任意の楽曲に含まれる音価の個数(音符と休符の個数の総数)を表す. は楽譜上に記録される音価の集合である.本研究では,各音価を便宜的にTab. 3.に示す記号に対応させて記述した.

Tab. 2. 音程名称と要素 t i 𝒯 の対応

Tab. 2. Correspondence between semitones t i 𝒯 and pitch names

Tab. 2.
  
t i
音程名称   
t i
音程名称
0 同度 6 増4度/減5度
1 短2度 7 完全5度
2 長2度 8 短6度
3 短3度 9 長6度
4 長3度 10 短7度
5 完全4度 11 長7度

Tab. 3. 音価 r j に対応させた記号化

Tab. 3. Correspondence between note values r j and symbols

Tab. 3.
楽譜上の音価 音符 休符 楽譜上の音価 音符 休符
a A 付点8分 f F
付点2分 b B 3連(2/3) g G
2分 c C 8分 h H
付点4分 d D 3連(1/3) i I
4分 e E 16分 j J

4.2 音程および音価の抽出例

ここでは『日本わらべ歌全集』第2巻に掲載された青森県弘前市の《一つどせ下町中半の》の20音(Fig. 1.)に対して,音程データと音価データのベクトルの生成例を示す.Fig. 1.の旋律より,音高データから X は次のように生成できる:

  

X = ( x k ) k = 1 20 = ( 65 , 67 , 67 , , 62 , 62 ) .

これに対して,音程について T は次のように生成できる:

  

T = ( t i ) i = 1 19 = ( + 2 , 0 , 5 , , + 2 , 0 ) .

同様に,音価データから R は次のように生成できる:

  

R = ( r j ) j = 1 20 = ( h , h , h , , e , e ) .

以上より,《一つどせ下町中半の》における X , T , R の要素を時系列(添字 i , j , k の昇順)に並べた抽出例をTab. 4.に示す.

Fig. 1.

Fig. 1. 《一つどせ下町中半の》の旋律(抜粋)

Fig. 1. Excerpts from the song “In the middle of downtown”

Tab. 4. 《一つどせ下町中半の》に関する音程と音価の抽出例(抜粋)

Tab. 4. Pitch and note value extraction from “In the middle of downtown”

Tab. 4.
添字 i , j , k 楽譜上の音高 音高 x k 音程 t i 楽譜上の音価 音価 r j
1 ファ(F5) 65   
+ 2
8分音符 h
2 ソ(G5) 67   
0
8分音符 h
3 ソ(G5) 67   
5
8分音符 h
18 ド(C5) 60   
+ 2
8分音符 h
19 レ(D5) 62   
0
4分音符 e
20 レ(D5) 62 4分音符 e

4.3 判別分析

判別分析とは,個体がどの集合に属するかが明確な学習データを用いて,分類器に基づく判別モデルを構築し,そのモデルを用いて所属不明の個体の帰属集合を判別する多変量解析の手法である.判別分析では,1つの判別モデルが最高精度を得るとは限らないため,複数の判別モデルを統合的に用いて判別結果を考察することが有用である [14]

本研究では,3つのジャンル(童謡,わらべうた,流行歌)の分類に有効な特徴量を特定するために,各ジャンルを目的変数,各楽曲の音程データと音価データの出現頻度を説明変数として,ランダムフォレスト [15]による判別実験を実施した.ランダムフォレストは,複数の分類器の結果を統合することで分類精度を向上させるアンサンブル学習の一種であり,分類精度が高いことが実証されている [16].これは,ブートストラップサンプリングしたデータから生成した決定木の結果を統合して分類を行う方法である.この手法では,決定木の生成に用いる特徴量(説明変数)の数と,決定木の数が主要なパラメータとなる.これらをいくつに設定すべきかについては,解析結果の誤判別率の履歴から決定することになる.本研究では,これらのパラメータについては,初期設定として特徴量7個,決定木500本から開始し,グリッドリサーチによって,チューニング(最適化)を行った.その結果から,最終的には,特徴量6個,決定木500本として分析を行った.

また,ランダムフォレストでは,分類に用いる説明変数の重要度をジニ係数の減少量(mean decrease Gini)から判断できる.ジニ係数の値が大きいほど判別結果(分類)がばらつき,小さいほど判別結果がまとまることを示すため,近似的にジニ係数の減少量の大きい説明変数から学習に用いた特徴量の重要度を把握することができる.

本研究では,ランダムフォレストによる分類結果の信憑性を担保するために,線形判別分析,多項ロジスティック回帰分析,サポートベクターマシン [17]の各判別モデルによる分類精度との比較を実施した.判別モデルの精度は,LOOCV(Leave-One-Out Cross Validation)による交差検証法で行った正解率と,再現率と適合率の調和平均であるF値(F-measure)を用いて評価した.LOOCVは,全体から1つの楽曲を抜き出してテストデータ,残り全ての楽曲を学習データに設定し,全楽曲を1回ずつテストする検証法である.LOOCVを用いる利点として,学習結果のエラー率を過大評価しにくいことと,全てのデータに対して判別誤差を求めるため,学習データのランダムサンプリングによって生じる判別結果からのずれを抑えられることがあげられる.

4.4 TF-IDF

本研究では,3つの音楽ジャンルの判別に有効だった特徴量の具体的な使用傾向の差異を把握するために,各楽曲コーパスに含まれる楽曲から生成した音程ベクトル T および音価ベクトル R N-gramの相対頻度に対してTF-IDF値を算出し,各ジャンルにおける特徴的な推移パターンを抽出した.

TF-IDFとは,テキスト分析において重要語の抽出に使用される統計的指標である.TF-IDFは,TF(Term Frequency)とIDF(Inverse Document Frequency)の積によって求められる.TFは,ある文書中の語の出現頻度を表し,IDFは対象とする全文書数を語が出現する文書数で割って対数をとった値を表す.このTF-IDFの値が大きいほど,その文書に特徴的な指標であるといえる.本研究では,TFの定義として「1つの音楽コーパス中のN-gramの相対頻度」を用い,IDFの定義として,「対象とする全音楽コーパスに1を加えた値をN-gramが出現する音楽コーパス数に1を加えた値で割って対数をとり,さらに1を加えた値」を用いる.また,各コーパス内の TFとIDFの積に対してL2ノルムで正規化を行った.

TFに対してIDFを重み付ける効果は,出現頻度の高いパターンに過大な重みを与えてしまうことを避けることにある.具体的には,多くの文書に出現するありふれた語(本研究でいえば音楽ジャンルに関わらず普遍的に現れる音程推移や音価推移)の誤検出を減らし,特定の文書にしか出現しない語(特定の音楽ジャンルに特有の音程推移や音価推移)の重要度を高める役割を果たす.しかし,文書数が少ない場合にはIDFの効果が認められないことがある.そこで本研究では,IDF=1として各推移パターンを算出した場合とそうでない場合との結果を比較し,とくに音価推移の抽出結果にIDFの効果がみられたため,TFに対してIDFで重み付けた分析を行った.

また,一般に,N-gramの頻度を抽出する際に,Nをいくつまで集計するかについては,定まっていない.本研究では,高際ら(2013) [9]と同様に,音程データと音価データのbigram(N=2),trigram(N=3)の頻度を用いることにした.

5 分析結果

5.1 ジャンルごとの基本統計量

Tab.5.は,3つの曲集に含まれるMusicXMLに対して,XMLパーサを用いて集計した<pitch>タグの出現頻度の要約である.この集計結果から,童謡とわらべうたの音符の頻度には差がなく,流行歌は童謡やわらべうたと比べて1曲の頻度が高いことが分かる.

Tab. 5. ジャンルごとの1曲あたりの音符の出現頻度の要約

Tab. 5. Summary of the number of notes used per song for each genre

ジャンル 平均値 標準偏差 最小値 中央値 最大値
童謡 47.93 35.80 10 42 271
わらべうた 45.03 32.69 6 42 376
流行歌 73.27 41.38 26 77 262

Fig.2.からFig.4.は,それぞれ3つのジャンルにおける音程,音価(音符),音価(休符)の出現率の比較結果である.本研究では,分析対象の楽曲中に1オクターヴを越える音程の跳躍( | t i | > 12 )は存在しなかったため,音程推移パターンの構成要素は,Fig.2.のように | t i | 12 の範囲内に収まった.童謡の使用音程については, t i = 0 の割合が全体の41.25%, t i < 0 が30.58%, t i > 0 が28.17%であった.わらべうたの使用音程については, t i = 0 の割合が全体の42.15%, t i < 0 が29.58%, t i > 0 が28.26%であり,流行歌の使用音程については, t i = 0 の割合が全体の25.71%, t i < 0 が38.66%, t i > 0 が35.63%であった.これらのことから童謡とわらべうたにおける1音ごとの音程の使用傾向が類似しており,流行歌とは異なることが読み取れる.

Fig.2.

Fig.2. 音程データの使用頻度の比較

Fig.2. Frequency of pitch interval data

Fig.3.およびFig.4.の結果を総合して各ジャンルにおける使用音価の上位3位を集計すると,童謡については,8分音符(h)が54.58%,4分音符(e)が14.76%,16分音符(j)が14.09%であった.わらべうたについては,8分音符が37.73%,16分音符が21.40%,16分音符が16.49%であり,流行歌については,8分音符が35.79%,4分音符が21.10%,16分音符が12.17%であった.童謡よりもわらべうたの方が付点8分音符(f)の使用頻度が高いことが分かる.

各ジャンルに共通して使用される音価は,8分音符(h),4分音符(e),付点8分音符(f),16分音符(j),4分休符(E),8分休符(H),付点8分休符(F)に限定されていることが確認された.Fraisse(1982)は,楽曲ごとに使用音価の割合を調査した際に80%以上が2種類の音価を使用しており,この2種類の音価を p q p > q )とすれば,その使用率は 1 : 2 もしくは 1 : 3 であるという仮説を提唱している [18].しかし,本研究では,いずれのジャンルもFraisseの仮説に従わなかった.

Fig.3.

Fig.3. 音価データ(音符)の使用頻度の比較

Fig.3. Frequency of note value data (notes)

Fig.4.

Fig.4. 音価データ(休符)の使用頻度の比較

Fig.4. Frequency of note value data (rests)

5.2 判別分析

3つのジャンル(童謡,わらべうた,流行歌)を目的変数,各楽曲に使用される音程と音価の出現頻度を説明変数として設定し,ランダムフォレストを含む4つの判別分析を実施した.Tab. 6.は,4つの判別モデルの判別精度の一覧である.ランダムフォレストによる判別精度(0.9637)およびF値(0.8929)が最も高いことから,本研究における判別モデルとして信憑性が確認された.

Tab. 6. 判別モデルごとに算出した判別精度とF

Tab. 6. Classification accuracy and F-measure calculated for each classification model

判別モデル 判別精度 F
線形判別 0.9130 0.7264
サポートベクターマシン 0.9163 0.7322
多項ロジスティック 0.9309 0.7844
ランダムフォレスト 0.9637 0.8929

Tab. 7. ランダムフォレストによる判別結果と二値分類から得られるF

Tab. 7. Classification result using Random Forest andF-measure obtained from binary classification

童謡 わらべうた 流行歌 誤判別率 二値分類のF
童謡 242 108 17 0.3406 0.8733
わらべうた 14 4,082 2 0.0039 0.9340
流行歌 11 22 295 0.1006 0.9566

Tab.7.は,ランダムフォレストを判別モデルとして用いた判別結果に基づき,行方向に正解ジャンルの楽曲数,列方向に予測したジャンルの楽曲数を変数として配置した誤判別表である.わらべうたの使用楽曲数が他ジャンルよりもオーダーが多いことによる分類実験への影響を確認するために,Tab.7.の6列目には,判別結果に対して,1ジャンルとそれ以外の2ジャンルに分ける二値分類から算出したF値をそれぞれ掲載した.いずれのF値も0.85を超えていることから,ジャンル間の使用楽曲数の偏りが判別結果に与える影響は小さいと考えられる.

わらべうたは高い精度で判別できていることに対して,わらべうたとして誤判別された童謡が108曲(童謡の29.43%)と割合が高いことから,両者には音程や音価の使用傾向に類似点があることが読み取れる.あわせて,流行歌として誤判別された童謡は17曲(童謡の4.63%)であり,誤判別率も低いことから,流行歌の旋律は,他の2つのジャンルと異なる音程と音価の使用傾向があることが分かった.

Fig. 5.は,ランダムフォレストを実施する際に用いた説明変数に対するジニ係数の減少量の頂点プロットである.Fig.5.より,音程と音価の使用頻度に基づく3つのジャンルの分類に有効な説明変数は,完全4度上行( + 5 ),長2度下行( 2 ),長2度上行( + 2 ),短3度下行( 3 )の順に重要であることが分かった.音価に関する変数は,全体で5位の4分音符(e),10位の4分休符(E),12位の8分音符(h),14位の16分音符(j)の順に重要であることが分かった.

Fig. 5.

Fig. 5. 分類に用いた説明変数に関するジニ係数の減少量

Fig. 5. Mean decrease Gini for explanatory variables used for classification

5.3  N-gram分析に対するTF-IDF値

ここでは,TF-IDF値の上位に含まれる音程推移と音価推移におけるbigramおよびtrigramの結果を付録Aに示し, N 4 の推移については割愛した.以下では,任意の連続する音程推移の要素を ( t i , t i + 1 ) および ( t i , t i + 1 , t i + 2 ) ,任意の連続する音価推移の要素を ( r j , r j + 1 ) および ( r j , r j + 1 , r j + 2 ) として表記する.

Tab. A1.の音程推移のbigram上位10位までに着目すると,順位の入れ替わりはあるものの,童謡とわらべうたが使用するパターンは共通していることが分かる.流行歌の5位と8位に出現する ( 1 , 2 ) ( + 2 , + 1 ) は,童謡では11位と13位,わらべうたでは16位と17位とに出現する.流行歌は, t i = ± 1 が音程推移に絡むパターンのTF-IDF値が他の2つのジャンルよりも高い.また,合計値 s = i i + 1 t s に着目すると,いずれのジャンルも共通して,| s = i i + 1 t s | 7 (完全5度音程)の範囲内にあり, 0 ± 5 を形成するパターンだけで20位以内の半分以上を占める.しかし,童謡とわらべうたは,流行歌よりも合計値が小さい傾向がある.

Tab. A2.の音程推移のtrigram上位10位までに着目すると,bigramの結果と同様に,童謡とわらべうたは使用するパターンに共通点が多く,流行歌との差異が明確にみられた.具体的には,3つのジャンルの音程推移パターンの上位は, t i = ± 2 , ± 3 によって構成されるものが多い中,流行歌は3位に ( + 5 , + 4 , 2 ) という広い音程の跳躍を含むパターンが出現する.また,流行歌は20位以内に t i = ± 1 を使用するパターンが5つ存在し,いずれもTF-IDF値が高い.しかし, t i = ± 1 を使用するパターンは,童謡では17位,19位,20位,わらべうたでは20位のみに出現し, TF-IDF値も低いことから,流行歌ほど重要なパターンでないことが読み取れる.また,合計値に着目すると,流行歌では s = i i + 2 t s = ± 7 を形成するパターンはTF-IDF値が高いものの,童謡やわらべうたでは流行歌ほど重視されていないことが分かる.

Tab. A3.の音価推移のbigramでは,3つのジャンルで1位に(h, h)(8分音符の連続),童謡と流行歌では2位,わらべうたでは3位に(e, e)(4分音符の連続)が出現しており,これら2つの音価推移が共通して重要なリズムパターンであることが分かった.流行歌では,このような同一音価を連続使用するパターンが10位以内の半分を占めており,そのTF-IDF値も高い.流行歌5位の(c, c)(2分音符の連続)や8位の(a, a)(全音符の連続)などの長い幅をもつ音価の連続使用は,童謡やわらべうたにはみられないパターンであった.その一方で,童謡やわらべうたにだけ共通して出現したパターンは,童謡5位とわらべうた10位の(e, f)(4分音符と付点8分音符の結合),童謡7位とわらべうた4位の(j, f)(16分音符と付点8分音符の結合)のみであった.このような付点の長さをもつ音符b,d,fを挟むパターンは,童謡とわらべうたの中で高いTF-IDF値を取るが,流行歌では6位にだけ出現している.

Tab. A4.の音価推移のtrigramは,bigramの結果と類似したパターンが抽出された.流行歌では,8分音符,4分音符,2分音符,全音符の連続使用が上位に出現するが,童謡とわらべうたでは,共に1位の(h, h, h),4位の(e, e, e)にだけ出現する.また,付点の長さをもつ音符を絡めるパターンは,童謡とわらべうたに共通して抽出されているが,流行歌の上位10位以内には一切出現していない.

N 4 に関する音程推移の結果を要約すると,いずれのジャンルも N が偶数次と奇数次の場合では,パターンの構成要素や合計値 s = i i + N 1 t s は,それぞれbigramとtrigramを拡張した結果であった.また, N 4 に関する音価推移の結果は,trigramまでの結果と同様に,TF-IDF値の上位には休符を含むパターンが抽出されなかった.流行歌は,上位4位までがすべて同一音価を連続使用するパターンで占められたが,童謡とわらべうたは,上記の8分音符と4分音符の連続使用が出現するのみであった.その一方で,童謡とわらべうたの上位には,高いTF-IDF値をもつ付点8分音符を絡めるパターンが出現していたが,流行歌の上位10位以内には一切出現しなかった.

6 考察

判別分析の結果より,3つのジャンルの音程と音価の使用傾向は,童謡とわらべうたのグループ,流行歌のグループに大別できることが分かった.ここでは,TF-IDF値の上位に出現した音程推移と音価推移の結果について,ジニ係数の減少量の結果を対照させて童謡の旋律における「子どもらしさ」の表現方法を考察する.

6.1 童謡の旋律を構成する音程推移の特徴

N-gramにおける各パターンの構成要素に着目すると,いずれのジャンルも ± 2 ± 3 を多用している.とくに,2音程推移が形成するパターンは,全体で同度( 0 )と完全4度音程( ± 5 )を形成するパターンが上位を占めていた.このうち,完全4度音程を形成するパターンは,音楽学者の小泉(1958)が提唱したテトラコルド理論(付録B) [19]の音型と一致する.童謡とわらべうたの音程推移を比較すると,両者は ± 2 ± 3 を構成要素にもつ民謡のテトラコルドと律のテトラコルドを形成するパターンを多用していることが分かる.その一方で,流行歌は, ± 1 ± 4 を構成要素にもつ都節のテトラコルドを形成するパターンも使用する傾向がある.したがって,童謡とわらべうたの旋律では,民謡のテトラコルドと律のテトラコルドを形成するフレーズが基礎にあるが,流行歌のように半音( ± 1 )の上行・下行を積極的に採用しないという違いが明らかになった.この半音の使用は,前述の高際ら(2013) [9]が西洋音楽の影響として示した特徴に他ならない.

また,流行歌では,音程推移の合計が完全5度音程( ± 7 )を形成するパターンが特徴的であったが,童謡とわらべうたの旋律には,完全5度音程を越えるパターンが重視されないという明確な違いも明らかになった.

6.2 童謡の旋律を構成する音価推移の特徴

ジニ係数の減少量から,3つのジャンルの分類について重要な音価の特徴量は, 4分音符,10位の4分休符,12位の8分音符,14位の16分音符であった.N-gramの構成要素に着目すると,童謡とわらべうたの旋律では付点8分音符と16分音符を組み合わせた跳躍のあるリズムを形成する傾向が読み取れた.しかし,流行歌では,16分音符を連続使用する細かいリズムから,2分音符や全音符を用いた幅の広いリズムまで,同一の音価を連続使用する特徴がある点で,童謡やわらべうたの旋律と異なることが分かった.とくに,童謡とわらべうたを比較した際に,わらべうたの方が付点8分音符の使用頻度が高いことが集計結果から明らかになっているが,ジャンルの判別には大きな影響がないことが分かった.

本研究で使用した童謡とわらべうたは,主に1930年代に採譜されたものである.この当時の代表的な遊びである羽子板や鞠つきなどは,歌唱の際に動作を伴うため,複雑な音価推移を多用した旋律は不向きであり,跳躍のあるリズムを使った節回しが抽出されることと関連している可能性が考えられる.

6.3 童謡の旋律における「子どもらしさ」

以上を総合し,童謡の旋律における「子どもらしさ」の特徴は,次のようにまとめられる.童謡における「子どもらしさ」をもつ旋律は,1つ1つの音程が完全4度を越えない狭い音域に収まる.その旋律は,長2度,短3度の音程を使って,フレーズ全体で民謡のテトラコルドと律のテトラコルドを形成するか,フレーズの開始音高に回帰するパターンを形成する特徴がある.これは,フレーズ全体で完全4度音程を越えたり,半音の下行形を多用したりする流行歌とは異なる.とくに,旋律中のフレーズ全体が完全5度音程を越えてしまうと「子どもらしさ」が失われる.「子どもらしさ」をもつ旋律は,付点8分音符と16分音符を組み合わせた跳躍のあるリズムを作る.同じ音価を連続使用した細かいリズムや,緩急をつけたリズムを多用することは「子どもらしさ」をもつ表現方法として適切ではない.

7 総括

7.1 結論

本研究では,童謡の旋律における「子どもらしさ」の表現方法を明らかにするために,3つの曲集を対象として,子どもたちが遊びの中から自然発生的に創作したわらべうたの旋律,童謡の旋律,同時代に親しまれた流行歌の旋律を計量比較した.そして,童謡とわらべうたの共通点,流行歌との相違点から,童謡の旋律における「子どもらしさ」の表現方法として,次の4点を明らかにした:

  •    1つ1つの音程が完全4度を越えない狭い音域に収まること.
  •    民謡と律のテトラコルドを形成するか,元の音に回帰するフレーズを形成すること.
  •    付点8分音符と16分音符を組み合わせた跳躍のあるリズムを作ること.
  •    連続した細かいリズムや,緩急をつけたリズムが多用されないこと.

7.2 今後の課題

本研究では,童謡の旋律における「子どもらしさ」をもつ表現方法として,跳躍のあるリズムを抽出した.しかし,なぜ「子どもらしさ」をもつ表現では,流行歌で使われる細かいリズムや緩急をつけたリズムが多用されないかという疑問までは解決できなかった.また,本稿の冒頭では,旋律と言葉の関係について触れたが,両者の因果関係までは明らかにしなかった.そのため,歌詞と旋律の対応に着眼した分析を展開し,「子どもらしさ」をもつ表現方法を言語的側面の計量比較からも探究していくことが期待される.

「子どもらしさ」をもつ旋律から抽出された付点の長さの音符を組み合わせた跳躍のあるリズムは,様々な遊びに応用可能であるだけでなく,擬音・擬声語を取り入れやすく,子どもの自然な感覚が即興で旋律を創作された言葉を当てはめることが容易であると考えられる.例えば,言語学における強勢拍と音節拍の違いを定量化するところから出発しているPatel and Daniele(2003) [20]やCondit-Schultz(2019) [21]によるリズムの跳躍の指標を用いた計量比較をすることで,流行歌・民謡などの大人が創作した旋律との違いを精緻に捉えていく可能性が考えられる.

また,本研究では,音価推移を分析する際に,小泉(1969) [10]が提案した跳ねるリズムや休符の長さをデフォルメした24種の基本リズムパターンを使用せず,楽譜に記録されたままの音価データを用いて分析を実施した.その結果,跳躍のあるリズムについて意味のある結果が得られたものの,わらべうたの旋律では比較的使用頻度の少ない2分音符,全音符,休符の価値を見出すことができなかった.この問題を解決する方針として,小泉が提唱するようにリズムパターンの集計時に音価をデフォルメした上で集計・分析する方針が考えられる.

謝辞

本研究は,JSPS科研費「日本民謡の旋律と歌詞の音韻の計量比較による地域性の分析」(18K18336),2018年度サントリー文化財団「人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成」の助成を受けた.また,本研究の実施にあたり,ご協力をいただいた尾城奈緒子氏,岡部格明氏,波多野賢治氏に謝意を表する.

References
Appendices

付録A  N-gram分析の結果

Tab. A1.およびTab. A2.は,それぞれTF-IDF値の上位20位以内に含まれる音程推移のbigramとtrigramである.表中には,順位やTF-IDF値に加えて,各パターンの取り得る値の合計も記載した.また,Tab. A3.およびTab. A4.は,それぞれTF-IDF値の上位10位以内に含まれる音価推移のbigramとtrigramである.

Tab. A1. 音程推移のbigramに対するTF-IDF値(上位20位)

Tab. A1. TF-IDF value for bigram in pitch transitions (top 20)

Tab. A1.

Tab. A2. 音程推移のtrigramに対するTF-IDF値(上位20位)

Tab. A2. TF-IDF value for trigram in pitch transitions (top 20)

Tab. A2.

Tab. A3. 音価推移のbigramに対するTF-IDF値(上位10位)

Tab. A3. TF-IDF value for bigram in note length transitions (top 10)

Tab. A3.

Tab. A4. 音価推移のtrigramに対するTF-IDF値(上位10位)

Tab. A4. TF-IDF value for trigram in note length transitions (top 10)

Tab. A4.

付録B 小泉文夫のテトラコルド理論

テトラコルド理論とは,音楽学者の小泉(1958) [19]が提唱した日本音楽を説明するための音型である.テトラコルドは,核音と呼ばれる完全4度音程を形成する2つの音高と1つの中間音の3音で構成される.完全4度音程における中間音の配置は,4通り考えることができ,それぞれの位置関係に対して名称が与えられている(Tab. B1.).例えば,Fig. B1. のようにラとレを核音とする完全4度音程があるとき,その中間音の候補は♭シ,シ,ド,♯ドの4通りとなる.

Tab. B1. 4種のテトラコルドの基本型

Tab. B1. Four types of tetrachords

Tab. B1.
種類 名称 音程関係
1 民謡のテトラコルド 短3度+長2度
2 都節のテトラコルド 短2度+長3度
3 律のテトラコルド 長2度+短3度
4 琉球のテトラコルド 長3度+短2度
Fig. B1.

Fig. B1. ラとレを核音にもつ場合の4種のテトラコルドの譜例

Fig. B1. Example of four types of tetrachord with A and D as nuclear tones

 

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