デジタル・ヒューマニティーズ
Online ISSN : 2189-7867
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『デジタル・ヒューマニティーズ』第三号刊行に寄せて
永崎 研宣
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2022 年 3 巻 1 号 p. 1

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本年は、ADHO (Alliance of Digital Humanities Organizations)の年次国際学術大会DH2022が東京大学を拠点としてオンライン開催されるという、日本のデジタル・ヒューマニティーズ(DH)分野にとっては大きな出来事があった。"Responding to Asian Diversity"のテーマの下、世界中のDH研究者がオンラインで参加するなかで、日本を含むアジアに関するDH研究も様々な形で広く知られる機会を得た。今後、国際的なDHの潮流にアジアがより本格的に参画することで、その多様性がもたらし得る意義をより深めていくものと期待している。

そのようななかで、本分野の日本語論文誌『デジタル・ヒューマニティーズ』は隔年刊行で本年の刊行で第三号となる。今回も意欲的な論文の応募があり、編集委員会による検討と匿名の査読者の方々によるきわめて丁寧な査読があり、2本の論文と1本の研究データ論文が掲載されることとなった。いずれも、本分野の今後の発展を期待させる素晴らしい論文であるように思う。

今号にて初めての掲載となった研究データ論文の経緯についても触れておきたい。本誌では、研究データに関する論文の受け入れをはやくから表明していたものの、なかなか掲載には至らなかった。今回は、J-STAGEが研究データ搭載サービスJ-STAGE Dataを開始し、本誌でもこのサービスに参加したことからデータ搭載が可能となり、研究データ論文の受け入れ体制がより充実することとなった。このタイミングでデータ論文の投稿をいただいたことは本誌としてもありがたいことであった。人文学における日本語での研究データ論文の取組みは現在のところは希少なものであり、今回の掲載は、日本において人文学がオープンサイエンスに対応するための貴重な一歩である。データ作成をされた執筆者、初めての掲載に向けてルールの細部を検討しながら査読を担当した査読者の方々、そして、それをとりまとめた編集委員会が傾けた労力は、DHのみならず、より大きな文脈においてもその意義が認められることになると確信している。

なお、『情報処理学会論文誌』の人文科学とコンピュータ特集号が隔年刊行されているため、査読等にかかる同分野の研究者のリソースを消費しすぎないようにするという観点から、本誌は現在のところ隔年刊行を継続している。同特集号は2023年5月締切り、そして、本誌は2024年春の締切りを予定している。ただし、本誌は、早期公開制度を採っており、次号の締切りに関わらず、早期公開として対応することは可能であり、本誌への投稿を希望する論文があればいつでも投稿をお待ちしている。今後も、同特集号とともに、日本のデジタル・ヒューマニティーズの発展に寄与していくことを目指したい。

 

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