2026 年 8 巻 No.1 号 p. 85-105
本研究の目的は、日本語版中学生用創造性パーソナリティ尺度と中国で使用されている原版の尺度をもとに、比較研究を行い日中共通の創造性育成モデルを作成することである。日本人の調査協力者として、千葉県内のA中学校272名を対象に調査を実施した。中国人の調査協力者としては、遼寧省大連市のZ中学校の238名を対象に調査を実施した。研究1では日中両国における中学生に対して、分散分析・相関分析・重回帰分析・t検定を行った。結果は、中国の方が一部高い結果となったが、それ以外には差がなかった。研究2では、多母集団同時解析を行い、結果として『創造的発想力』『創造的冒険心』『創造的感覚性』の3つの因子が確認された。以上の結果から日中両国における創造性パーソナリティの育成モデルが完成し、相互に関連し合うモデルが日中に共通していることが確認された。
The purpose of this study is to conduct a comparative investigation of the Japanese version of a creative personality scale for junior high school students and the original scale used in China, and to establish a creativity development model common to both Japan and China. A survey was conducted with 272 students from Junior High School A in Chiba Prefecture as the Japanese sample. As the Chinese sample, 238 students from Junior High School Z in Dalian, Liaoning Province, were surveyed. In Study 1, analysis of variance, correlation analysis, multiple regression analysis, and t-tests were conducted for junior high school students in both Japan and China. The results showed that Chinese students scored higher on some variables, whereas no significant differences were found on others. In Study 2, multi-group simultaneous analysis was performed, and three factors were identified: Creative Thinking Ability, Creative Risk-Taking, and Creative Sensitivity. Based on these findings, a creativity development model for creative personality applicable to both Japan and China was constructed. The results confirmed that an interrelated model of creative personality development is common to both countries.
摘要
優れた留学生の獲得は高等教育機関の課題となっている。わが国においても、経済社会の発展、科学技術、学術の振興、人材の育成など、留学生を戦略的に獲得する必要がある(文部科学省,2008a)。そのため、福田政権は『留学生30万人計画』を実施し、グローバル戦略を展開する一環として、2020年を目途に30万人の留学生受け入れを目指した(文部科学省,2008b)。2023年5月1日現在において外国人留学生数は、279,274人だった。留学生数の多い国は、中国115,493人、ネパール37,878人、ベトナム36,339人だった(文部科学省,2024)。日本企業が積極的に外国人留学生を採用・活用し、国際競争力を強化することで日本の国力を維持しようということが、この計画の最終目的である(茂住,2010)。2011年の東日本大震災や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)といった一時的に外国人留学生が減少する出来事はあったが、現在も留学生数は増加しており、中でも中国人留学生の数が一番多いと言えるだろう。李(2016)は、中国人留学生が日本留学を決める要因を分析した。要因として、①より質の高い教育、より多くの就職機会を求める点、②グローバル化の進展によって、海外留学の敷居が低くなりつつある点、③日本の国費奨学金は、中国人の留学コスト削減につながり、成績優秀者には効果のある政策である点、以上の3つをあげている。
日本と中国は一衣帯水の隣国で、文化も近く、また同じ漢字圏ということもあり、中国にとって日本はもっとも留学しやすい国の1つと言える。日本の人口が減りつつある昨今、優秀な人材を確保し、より経済を発展させるためにも、優秀な中国人留学生を受け入れることが必要不可欠であると考える。
1.2 経済的発展と創造性坂谷(2017)は、イノベーションの源泉となる要素として創造性は重要さを増し、ビジネスの最前線である企業の事業の現場のように、創造性の発揮が鍵となる場面の範囲も拡大していると述べている。そのため、わが国における経済的な発展を促すためには、創造性が重要な能力の1つだと言えるだろう。
経済産業省では、「大企業等人材による新規事業創造促進事業報告書 -創造性リカレント教育を通じた新規事業創造促進事業-」の中で、新たな事業を生み出すために、社会人の創造性の育成が注目されている(経済産業省,2024)。また、「2021年度産業経済研究委託事業(創造的思考、及び創造的態度に関する調査研究)の報告書」においても、日本(主に大企業)における新規事業の成功率を高めるために必要な「個人やチームの創造的な態度と思考」とは何かについて検討している(経済産業省,2022)。金(2005)は、クリエイティブ時代の到来とこれからのコンテンツ政策研究の在り方の中で、重要なことは「個人や企業の創造性を如何に多く引き出し、その成果を商品化することで経済的な価値につないでいくか、そしてそれが最終的には、如何にして国家経済に貢献するという好循環を生み出すか」にあると述べている。
以上のように最近では経済的な観点からも創造性の育成が注目されているが、創造性を育成するのにもっとも望ましい時期は、発達段階である幼児期から思春期であろう。Adobe社(2020)は、日本の高校生1200人を対象とした創造性についての意識調査を行い、創造力を育てる鍵は小学校4年生から中学校3年生にあると発表している。そのため、学校教育における創造性育成モデルを明示していくことがより大きな経済発展へと繋がっていくと考えられる。
1.3 昨今における日本の創造性教育1960年代のわが国において、「科学技術の振興」と「創造性の開発」が重視され、英才教育と能力開発が産業界・教育界の緊急課題として浮上した(比嘉,2005,p2)。文部科学省では、「初等中等教育における創造性の涵養と知的財産の意義の理解に向けて」をテーマに会議が行われた(文部科学省,2017,2018)。また、2023年に「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業」として《子どもの未来を創造性豊かにする地域活動》が報告されるなど、その重要性に注目が集まっている(文部科学省,2023)。
日本創造学会は、2016年から創造性教育の現状の課題を扱うSIG(Special Interest Group)を立ち上げ、創造的な教育方法の領域で、教育改革の柱である「アクティブ・ラーニング」について、実施した活動の成果を発表している(西浦・國藤,2016)。例えば高橋(2016)は、教員534人に対して、主に創造技法を用いてアクティブ・ラーニングを実践するカリキュラムを行い、講習の終了時に「アクティブ・ラーニングへの創造技法の適応」という小論文の作成を求め、それらを分析して発表している。近藤・永井(2018)は、創造技法や創造性支援ツールに関する研究や創造性に関するグループワークが日本で盛んに行われていると述べている。
1.4 中国における創造性教育の特徴中国では、1980年代後半から子供の持つ様々な資質を全面的に伸ばす「資質教育」に対して自主性と個性の伸長が大切にされ、個人自ら自由性と主体性に基づいて新しいことを創る学習活動、すなわち創造性教育の必要性が盛り込まれている(包,尾崎,2004)。中国の学校教育では、あらゆる分野で創造性教育の研究が行われ、教育実践に持ち込もうとしている。そのため創造性教育は、全ての生徒に対して行われるべき共通の教育目標にかかげられている。系統的に教育をすることによって、独創的な側面において生徒を自立させ、自らの意識的に新しい知識、新しい事物、新しい思想や新しい方法を生み出すことができるようになることを目指している(包・尾崎,2005)。
徐(2005,p50)は、中国における創造性教育について、以下に示すように上海市閔行中学の事例を用いてその特徴を述べている。①生徒の創新精神と実践能力の育成を中心とする素質教育の観念を樹立した。②創造性教育に関する管理体制ができている。同校は科学技術教育センターを設置し、経験豊富な教員を専任教員として配属し、校長のリーダーシップの下で、仕事が行われている。③創造性教育を教科教育に組み込んでいる。必修科目には「創造的思考」があり、他の科目にも創造性教育の内容が多く含まれている。④創造的学習と実践を行う生徒団体を創設した。同校には青少年発明協会、情報科学技術協会、バイオテクノロジー研究会、文学創作社など多くの団体がある。団体の運営は全て生徒が自主的に行っており、教員は顧問またはアドバイザー役にとどまっている。⑤創造性教育の評価システムができている。創造性教育を持続的に展開するため、経費・制度・人事・研究開発などのいろいろな面で規則を定め、教員と生徒双方の創造的活動をサポートしている。⑥ネットワークを作り、交流を促進している。同校は多くの学術組織や専門家との間に緊密な関係を持っているため、常に創造性教育を促進させることができる。
更に、現在の中国ではSTEAM教育への関心が高まり、民間教育では創造性の育成を目的とした美術教育、情報教育が盛んになりつつある(福田,楊,2021)。福田・楊(2022)は、義務教育段階では学校教育の中で美術教育が最も創造性の育成に集中している段階にあり、美術教育は創造性を育成すると述べている。
1.5 日中両国における共通の創造性育成モデルの必要性日中両国は、創造性教育に対する重要性を充分に理解し、今日まで発展させてきた。今後も日本の更なる経済発展を遂げるため、中国の留学生及び労働者のためにも、日中共通の創造性育成モデルが必要となっていくと考えられる。しかし、日中共通の創造性に関するモデルは存在しない。また、日中の創造性を育成していく論理的なモデルも見当たらなかった。そして、両国における創造性に対する捉え方も類似点が多いながら比較研究は非常に少ないと言えるだろう。国籍にかかわらず潜在的な能力をもつグローバル人材を育成していくため、国際標準的な理論的モデルを構築することは量的な人材ニーズに応えるために有効な手段といえる(永井,2012)。よって、創造性における日中比較を行い、日中共通の創造性育成モデルを構築することは、経済的な視点からも意味があると言えるだろう。
佐藤・劉・車(2024)は、日中比較を目的とした創造性パーソナリティの尺度開発を行う際に、恩田(1994,p99)の定義を使用している。そのため本研究も同様に、新しい価値あるもの、またはアイデアを創り出す能力すなわち創造力、およびそれを基礎づける人格特性すなわち創造的人格1(恩田,1994,p99)と定義した上で、日本と中国の創造性パーソナリティを比較し、日中共通の創造性育成モデルを作成することを目的とした。ピアジェの発達段階理論における形式的操作期では、11歳以降になると論理的思考や抽象的思考ができるようになり、自分で体験したものではなくても想像して、頭の中で考えることができるようになる。想像力(imagination)は創造力(creativity)の元となるものである(飯田,1974)。そのため、創造性を測り比較するのは青年前期である中学生が望ましいと考えた。よって、日本と中国の中学生を比較することに意義があるとして、共通の創造性パーソナリティ育成モデルを探ることを目的とする。
本研究では、日中両国の中学生を対象として創造性パーソナリティの多母集団同時解析を行う。仮説のパス図として、Figuer 1に示す。
文部科学省(2015)は≪育成すべき資質・能力の3つの柱による教育課程の構造化≫の中で、アクティブ・ラーニング(Active Learning)の視点からの創造的な学習プロセスの実現を中心に置き、三角形の育成モデルを作成している。このことから、日中両国の創造性育成モデルにおいても同様であり、文化差の影響を受けないモデルではないかと考えた。また、日中両国に共通する項目内容を同等と判断すると、『発想力』『冒険心』『感受性』の3つが抽出されると考えた。
日中両国の創造性育成モデルを探ることは、今後の日中における経済にとって非常に重要であり、更には世界経済においても重要な意義があると言えるだろう。
本研究は、日中の中学生に対する創造性パーソナリティにおいて、年齢・性差・学業成績の分析を行い、結果を基に日中間で創造性パーソナリティを比較することを目的として行われた。
2.2 方法調査協力者
日本人調査協力者:2021年1月下旬に、千葉県内の公立学校、A中学校の全学年、合計285名を対象に調査を実施した。回答に不備のあった13名を除いた有効回答者は272名であり、内訳は1年生105名(平均年齢12.81歳)、2年生83名(平均年齢13.83歳)、3年生84名(平均年齢14.76歳)、性別は男性125名(平均年齢13.85歳)女性147名(平均年齢13.63歳)であった。
中国人調査協力者:2017年5月中旬に、遼寧省大連市のZ中学校の全学年、合計264名を対象に調査を実施した。回答に不備のあった2名を除いた有効回答者は262名であった。内訳は12歳~18歳で、1年生101名(平均年齢13.41歳)、2年生132名(平均年齢14.48歳)、3年生29名(平均年齢15.55歳)、性別は男性197名(平均年齢14.14歳)女性65名(平均年齢14.31歳)であった。
また、両国の中学校に通う学生は、学年ごとに年齢も異なる。特に、中国では転校や普通語(北京語)の能力によって、親の判断で学年を下げる場合もある。そのため、両国の比較調査を正確に実行できるように年齢を12~15歳に限定し、それ以外の年齢を除外した。除外した後の中国のZ中学校における調査協力者は238名であった。よって日中両国の合計の調査協力者は510名であった。
そして、本研究は日本と中国の一般的な中学校を対象として、比較可能と判断し調査を行ったが、各家庭における家族構成や経済状況、学校の背景などについてはプライバシーの観点から、個人が特定されないように一部の情報を削除した。
尺度
日本語版中学生用創造性パーソナリティ:曾・鄒(2015)による尺度を基に、佐藤・劉・車(2024)が作成した中学生の創造性パーソナリティを測る日本語版の尺度である。下位尺度は、『感興的研究』、『柔軟的着想』、『継続的挑戦』、『発展的想像』、『独創的探求』、『芸術的理解』の6つである。回答は原版と同じく“5.当てはまる”“4.やや当てはまる”“3.どちらとも言えない”“2.あまり当てはまらない”“1.全く当てはまらない”の 22項目5 件法とした。教示文は、「このアンケートは中学生の思考・個性や日常的な行動の特徴を調べるものです。」とした。また、回答例も示した。
中・高校生用創造性パーソナリティ:曾・鄒(2015)が作成した全42項目からなる中・高校生用の創造性パーソナリティを測る尺度である。下位尺度は『霊活敏鋭(柔軟で敏感)2』、『富于想象(想像が豊か)』、『明悟善感(理解と感情)』、『安于独処(独りが好き)』、『好奇求是(興味を追求)』、『楽于探索(探索が好き)』、『自由求異(自由な形式)』、『勇于挑戦(勇敢な挑戦)』の8因子であり、回答は“5. 当てはまる”“4.やや当てはまる”“3.どちらとも言えない”“2.あまり当てはまらない”“1.全く当てはまらない”の 5件法で行った。『安于独処(独りが好き)』と『自由求異(自由な形式)』は、佐藤・劉・車(2024)が日本語版の作成において、中学生には存在せず高校生のみに存在する因子であることを示唆しているため、本研究の分析からは除外した。
なお、本研究は、異文化間比較研究であるため、測定している構成概念について等価普遍性を考慮する必要がある。まず等価性については、使用した尺度(佐藤・劉・車, 2024)の作成過程でバックトランスレーションの手続きを取る等、同一の概念であることを検証済みであるため等価性を有するといえる。次に、普遍性についてだが、こちらも尺度作成の仮定において、概念の解釈が一致するものとそうでないものを把握する手続きがなされている。本研究の以後の分析では、両国に共通する概念を分析対象としたため、普遍性を有するといえる。
2.3 倫理的配慮日本における本研究のアンケートは、A中学校の元校長に調査を依頼し、現校長に対し、研究のみに使用すること、発表に関して営利を目的とする企業等から報酬を受けていないことを説明した上で承諾を得て実施した。また、対象者に不利益がないよう、実施日は試験や学校行事などがない時期に行った。そして調査は匿名で行い、個人情報が特定できるような形では結果を公表しないことを説明した。以上のことを、協力者を介して口頭でも説明してもらい同意を得た。
中国におけるアンケートも同様に遼寧師範大学劉文教授からZ中学校の校長に対して説明し、承諾を得て実施した。なお、研究実施時の所属機関による倫理委員会においても承認を得ている。
2.4 結果2.4.1 分散分析
日本における創造性パーソナリティの年齢差を検証した。その結果、多重比較を要した下位尺度も含め、いずれも有意ではなかった(Table 1)。

中国における創造性パーソナリティの年齢差を検証した。その結果、『明悟善感(理解と感情)』 にのみ有意差がみられた(Table 2)。

2.4.2 相関分析
両国の中学生における創造性パーソナリティと学業成績の関連を明らかにするために相関分析を行った(Table 3)。その結果、日本における英語が『柔軟的着想』と弱い相関がみられた以外は、ほぼ無相関であった。なお、日本の理科と社会という科目は中国の科目区分と必ずしも対応しないため、本研究では分析から除外した。

2.4.3 重回帰分析
両国における創造性パーソナリティと学業成績の関連を明らかにするために、各学業成績を目的変数、創造性パーソナリティの下位尺度を説明変数(独立変数)としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。結果をFigure 2に示す。

2.4.4 t検定
日中両国の中学生における創造性パーソナリティを明らかにするためにt検定を実施した(Table 4)。

次に、性別毎の創造性パーソナリティにおけるt検定の結果をTable 5〜6に示す。

4つの下位尺度において、中国の方が有意に得点が高かった。続いて女性のみの創造性パーソナリティにおけるt検定の結果をTable 6に示す。

また、年齢ごとによるt検定も行った。12歳、13歳、15歳には有意な差は現れず、14歳にのみ有意な差が現れた。結果として、『柔軟的着想』と『霊活敏鋭(柔軟で敏感)』 (t=-4.71, df=194, p<.001)、『独創的探求』と『楽于探索(探索が好き)』 (t=-5.31, df=194, p<.001)については、中国の方が有意に得点が高かった。14歳によるt検定の結果は、全体の結果とほぼ同様の結果となった。
2.5 考 察本研究の目的は、日本と中国における中学生の創造性パーソナリティを比較することであった。
原・正木(2024)は、創造力を発揮することが難しい要因として、自己肯定感の低さといった要因が考えられると述べている。
国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター(2015)は、自己肯定感における調査で、米国・中国・韓国の3カ国に比べて日本は低い状況にあると発表した。中国は1979年から2015年まで一人っ子政策が実施され、一人っ子は「小皇帝」と呼ばれるほど愛情いっぱいに育てられ自己肯定感も高いと考えられる。また、中国は日本に比べて授業時間や科目数が多く、幅広い知識が身につくといえるだろう。創造性は「記憶された知識」と「ひらめき」から生まれる(村瀬,2014)。そのため、学校環境が異なることも中国のほうが高かった要因の一つといえる。
今後は、日本語版中学生用創造性パーソナリティ尺度との関連を測るために、「Rosenberg自尊感情尺度」(Mimura & Griffiths,2007)などを使用し、そうした関連を明らかにすることが求められる。そして、年齢別のt検定の結果からは、14歳にのみ有意差が現れ、その他の年齢では有意差は確認できなかった。このことから、両国の創造性パーソナリティにとって14歳という時期が非常に重要であるため、更なる検証を試みる必要がある。
本研究は、日本と中国の中学生を対象として創造性パーソナリティにおける共通の創造性育成モデルを見つけることを目的として行われた。
3.2 方法調査協力者
日本人協力者: 研究1と同じ調査協力者が調査を行った。
中国人協力者: 研究1と同じ調査協力者が調査を行った。
尺度
日本語版中学生用創造性パーソナリティ:研究1で使用した日本語版中学生用創造性パーソナリティ尺度を用意した。
中・高校生用創造性パーソナリティ:研究1で使用した中・高校生用創造性パーソナリティ尺度を用意した。
3.3 倫理的配慮研究1と同様の倫理的配慮を行った。
3.4 結果多母集団同時解析を行うために日中両国におけるデータの整理を行った。多母集団同時分析の実施には、配置普遍性 (Configural Invariance)が確認されている必要があるが、本研究で使用した尺度は、同一の尺度の言語違いであり、その因子構造は先行研究(佐藤・劉・車,2024)で同一性が確認されていため、配置普遍性は検証済みと判断した。しかし、因子名が各々の尺度では異なるため、下記にて便宜的に名称を改めることとした。
その他の因子については、両国にとって同等と判断できる因子に対して、共通の因子名を作成しデータとしてまとめることとした(Table 7)。
『感興的研究』と『好奇求是(興味を追求)』の項目内容は、「私は興味があるものに出会うと、様々な所から関連する情報を集める」などという点において互いに内容が共通するため同等と判断し、『好奇心』とした。『柔軟的着想』と『霊活敏鋭(柔軟で敏感)』の項目の内容は、「私はいつも他の人よりも深い見解が出せる」などという点において互いに内容が共通するため同等と判断し、『思考力』とした。『継続的挑戦』と『勇于挑戦(勇敢な挑戦)』の項目内容は、「私は、やると決断したら、いくら苦労しても最後までやり遂げる」などという点において互いに内容が共通するため同等と判断し、『持続力』とした。『発展的想像』と『富于想象(想像が豊か)』の項目内容は、「私は想像や空想に溺れ、あらゆる可能性を探求し、さらに自由に発展させるのが好きだ」などという点において互いに内容が共通するため同等と判断し、『想像性』とした。『独創的探求』と『楽于探索(探索が好き)』の項目内容は、「私は将来,研究職に就きたい」などという点において互いに内容が共通するため同等と判断し、『探究心』とした。『芸術的理解』と『明悟善感(理解と感情)』の項目の内容は、「私は感情表現が豊かで,想像しやすい詩や文章を読むのが好きだ」などという点において互いに内容が共通するため同等と判断し、『感受性』とした。
両国の中学生における創造性パーソナリティの多母集団同時解析をML法(最尤法)で行った。また、データはExcelで管理し、Amos26.0を使用して解析を行った。結果をFigure 3に示す。

結果として、『創造的発想力』『創造的冒険心』『創造的感覚性』が確認された。また、両国の適合度指標はχ2 ( 12 ) = 61.429,( p< . 001 ),GFI= .963,AGFI= .872,CFI= .953,RMSEA= .091,AIC=121.429であったため十分な値であると判断した。
3.5 考 察日中両国に対して多母集団同時解析を行った。結果として、『創造的発想力』、『創造的冒険心』、『創造的感覚性』の3つの因子が抽出された。
『創造的発想力』においては、中国の方が高い傾向が見られた。両国における当該因子の項目内容から、多くの知識を継続的に学ばせることが育成に繋がると推察された。『創造的冒険心』においても、中国の方が高い傾向が見られた。両国における項目内容から、興味を持ったことに対して、深く研究を行うことが育成に繋がると推察された。『創造的感覚性』においては、感受性は中国の方が高い傾向が見られ、『想像性』は、日本の方が高い傾向が見られた。両国における項目内容から、芸術作品や文学作品に触れる機会を増やし、深く理解や共感させることが育成に繋がると推察された。
日本の「総合的な学習の時間」は、1998年の学習指導要領改訂で創設された新しい学習の時間である(文部科学省,2022,p9)。中国では、2001年に教育改革が行われ「総合実践活動」が導入された。「総合実践活動」では、必修の内容領域として「研究性学習」、「情報技術教育」、「労働技術教育」、「地域活動と社会実践」の4つが示され、いずれも問題解決的学習が志向されている(貴志・魏,2015)。日本の「総合的な学習の時間」と中国の「研究性学習」は、その性質において共通点の多いカリキュラムであり、実際2者には似通った点も多々ある(朴・添田,2005,p10)。よって、日本の「総合的な学習の時間」と中国の「研究生学習」の育成カリキュラムが影響し、日中共通の創造性育成モデルが3つの因子で構成される結果となったのであろう。今後は、「総合的な学習の時間」と「研究生学習」を創造性パーソナリティという視点から直接比較することが今後の課題といえる。
本研究は、中学生の創造性パーソナリティを日中で比較することを目的として行われた。研究1では両国において比較を行い、研究2では両国において共通の創造性育成モデルを探すため多母集団同時解析を行った。これまでの結果を総合的に判断すると、中学生の創造性パーソナリティは中国の方がやや高いことが伺える。両国における結果では非常に特徴的な部分が見て取れるため、それらの原因として、一人っ子の性質や自己肯定感、そして学校環境が創造性パーソナリティに影響を与えていることが示唆された。また、多母集団同時解析においては『創造的発想力』『創造的冒険心』『創造的感覚性』が確認された。そのため、以上の3つの因子を日中両国で育成していくことが、より優秀な人材の確保へと繋がり、経済発展に対して寄与することができると考える。日中両国における共通モデル育成のための具体的な課外授業例をFigure 4に示す。
今後の課題としては、日本と中国の多母集団同時解析で得られたモデルを他国でも検証し、文化差の影響を受けない普遍的なモデルであることを検証することが求められる。さらに、本研究では創造性パーソナリティを比較するにとどまったが、創造的思考においても日中で比較を行ってゆく必要があると言える。TTCTやS-A創造性テストなどを用いた、外的妥当性を検証する研究の実施も望ましいと言える。
コロナ禍という厳しい状況にありながらも、花香健司氏や遼寧師範大学劉文教授研究室のご協力により、本研究を遂行することができました。また、ご助言をいただきました車翰博氏と邢燕氏と彭多蘭氏には、心から感謝を申し上げると同時に、調査実施にご協力いただいた日本や中国の先生方、ならびに参加された学生の皆様に対し、この場を借りて心より深く感謝申し上げます。
1恩田(1994,p99)の「創造的人格」は、本研究における創造性パーソナリティと同義である。
2本来は中国語の簡体字であるが、本研究は日本語の学術雑誌のため、すべてを日本で使用されている漢字に直した。また、( )内の日本語訳についても、正確な訳を書いた場合文章が長くなるため、意味を変えず簡略化した。