抄録
地震動の方向性について、様々な地震動強さ指標、応答スペクトルの周期について定量的に検討した。具体的には、過去に観測された強震記録からそれぞれの全36方向の地震動を合成して、様々な周期帯の弾性加速度応答スペクトル、あるいは、地震動強さ指標について、その大きさが方向によってどの程度変動するかについて検討した。その結果、いずれも変動係数にして、平均20%程度、方向性の強い地震動は40%以上変動していることがわかった。そして、一自由度系からなる建物群に一方向の地震動を入力して被害推定を行う場合などを想定し、構造物の地震応答が平均的なものとなる地震動の「平均方向」を、0-3秒平均加速度応答の平均値をとる方向として提案した。平均方向の地震動を用いて、建物群を対象とした一自由度系地震応答解析を行った結果、実際の被害率を再現でき、平均方向の有用性を確認した。