日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
最新号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
論文
  • 塩田 哲生, 司 宏俊, 木戸 智之, 藤原 広行
    2026 年26 巻2 号 p. 2_1-2_21
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    将来発生する地震には不確かさが内在するため,地震動評価の精度向上に向けては不確かさを適切に評価に織り込むことが重要である.地震動のばらつきに関する既往研究は多く存在するが,大規模地震における震源近傍の観測記録は数が少ないため,震源近傍のばらつきや各指標との依存性も十分に議論されていないなどの課題がある.耐震設計で考慮する震源が多様化する昨今においては,震源断層と対象地点の位置関係を踏まえたばらつきの評価も必要である.本検討では,日本国内で発生した比較的規模の大きい内陸地殻内地震の震源域を対象に,単一地点のサイトスペシフィックな地震動予測モデルによる予測値と観測値の残差から偶然的ばらつきを評価し,その空間分布を確認するとともに,震源距離,周期やずれのタイプとの依存性を議論した.偶然的ばらつきの値は,震源近傍ほど大きいこと,ずれのタイプによって傾向が異なることなどを確認し,震源近傍域における地震動評価の精度向上に資する知見を得た.

  • 月岡 桂吾, 岩田 直泰, 丸山 喜久
    2026 年26 巻2 号 p. 2_22-2_42
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    地震動指標値を空間補間して得られる揺れの分布は,地震防災の分野において様々な目的で利用されている.空間補間にはSimple Krigingや逆距離加重法が用いられることが一般的であるが,本稿では更なる推定精度の向上を目的としてガウス過程回帰による地震動指標値の空間補間方法を提案する.提案方法では二段階に分けて地震動指標値の空間補間を行う.第一段階は仮想的なノイズを導入したうえで地震動指標値を対象に空間補間を行い,第二段階は仮想的なノイズの影響によって第一段階の推定結果と観測値との間に生じる誤差を対象に空間補間を行う.第一段階と第二段階の推定結果を足し合わせることで,地震動指標値の空間分布を求める.過去に発生した地震を対象とした地震動指標値の推定の結果,仮想的なノイズを導入しないガウス過程回帰や,Simple Krigingと地盤増幅率に基づいた従前の方法よりも,提案した二段階のガウス過程回帰の方が推定精度の面で優位であることを確認した.

  • Hideyuki MANO, Toshiyuki IWAI
    2026 年26 巻2 号 p. 2_43-2_54
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    Centrifugal model experiments were conducted to investigate the change in pore water pressure after liquefaction under conditions where impermeable roadbeds of different thicknesses were adjacent to each other like a roadway and sidewalk. If the water film formed at the bottom of the impermeable layer during the dissipation process of excess pore water pressure due to liquefaction is continuous between the roadway and sidewalk areas, the water pressure exceeding the overburden pressure may act on the sidewalk area where the impermeable layer is thinner. This water pressure caused the ground surface of the sidewalk area to rise due to heaving. In the case where a drain was installed in the roadbed of the sidewalk area, little uplift of ground occurred.

  • 倉田 悠暉, 木村 克己, 関口 徹
    2026 年26 巻2 号 p. 2_55-2_74
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    1923年大正関東地震において多くの被害があった東京低地では,同じ低地であるものの場所によって推定震度に違いが見られ,表層地盤構造が影響している可能性がある.本研究では,隅田川周辺の東京低地を対象に,ボーリングデータに基づく3次元グリッドモデル手法によって表層地盤モデルを作成し,微動計測および地震観測の記録に基づいて,表層地盤のS波速度構造をより精度良く推定する方法について検討した.そしてそのモデルを用いた地震応答解析を行い,得られたSI値の分布は大正関東地震における住家全潰率から推定された震度分布と調和的な結果となった.

  • 山本 雅史, 高山 峯夫, 森田 慶子
    2026 年26 巻2 号 p. 2_75-2_87
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB)は鉛の温度やひずみ速度に依存した復元力を発生する.この解析モデルとして鉛の加工硬化と回復を考慮したモデルを提案した.加工硬化と回復はそれぞれアレニウス則に従い定義される.既存のモデルからの変更方法を示し,直径1300 mmの実大LRBの動的実験の実験結果を用いて同定を行った.本モデルは繰り返し加振による鉛プラグの温度上昇を反映しつつ,異なる振動数,振幅に対して非常によく実験結果を再現することができることが示された.本モデルは同様の依存性を持つ粘弾性体などのモデル化にも利用できる可能性がある.

  • 岩田 直泰, 森脇 美沙, 是永 将宏
    2026 年26 巻2 号 p. 2_88-2_106
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    新幹線などでは,地震時に迅速に走行列車を減速および停止させるために早期地震警報システムが稼働している.このシステムの性能向上に資する新たな警報手法の導入時において,対象鉄道路線に対する警報発令状況の総合的な事前評価は,十分に実施できていない.これを受け,早期地震警報システムの動作を模擬できる,地震時列車運転規制シミュレータを開発した.このシミュレータは,早期地震警報システムで用いる警報手法や動作条件を設定し,地震検知点で記録された地震波形データを入力することにより,導入効果や輸送影響を定量的に評価できる.開発したシミュレータを用いて,既往の大規模地震に対し警報発令特性に関する評価を行った.陸域で発生した地震の例では,開発中の警報手法は震源に最寄りの検知点において既往の手法より早く警報発令できることが示された.導入効果と輸送影響はトレードオフの関係となる場合があり,この関係を定量化できるシミュレータの出力に基づく評価指標は,鉄道事業者が新たな早期地震警報手法を導入する際の意思決定に活用できる情報である.

  • 三浦 房紀 , 舘 和夫, 竹島 敏明, 小圷 裕也
    2026 年26 巻2 号 p. 2_107-2_121
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    本論文では,近い将来発生が予測されている南海トラフ巨大地震,首都直下地震,さらには千島海溝・日本海溝の地震などの大規模災害が発生したときに,これまでとは全く異なる人工衛星の軌道によって,被災状況を迅速かつ効率的に把握することを可能とする衛星観測システムの提案を行い,その有効性について述べる.

  • 中村 豊, 齋田 淳, 佐藤 勉
    2026 年26 巻2 号 p. 2_122-2_135
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    東北大学構内の在来構造と免震構造のRC造建物が並立する免震実証棟で記録された2011年東北地方太平洋沖地震の公開デジタル波形を用いて,これらの建屋内の波動伝播時間などをCERS法で計測し物性値変動を分析した.建屋内の波動伝播時間は在来と免震とで異なり,短辺方向では,地震継続中,免震建屋でも伝播時間が増大,在来建屋ではさらに顕著に増大しその相違が次第に大きくなる.免震建屋の長辺方向ではやや増加した後安定しているが,在来建屋では次第に増大する.いずれも短辺方向で影響が大きいことが伺えるが,在来建屋にくらべて免震建屋の伝播時間の増大ははるかに少なく,減衰定数も在来建屋では6%~8%であるのに対して免震建屋では概ね2%程度と異なる.免震建屋では被害はほとんどなく在来建屋では外壁パネルが損傷し柱梁も損傷したと報告されており,計測された物性値変動はこれに対応する.免震建屋の高減衰積層ゴムの挙動についても議論した.

報告
  • 西坂 直樹, 大西 耕造, 石川 慶彦, 矢野 弘道, 宮腰 淳一, 池田 倫治, 辻 健
    2026 年26 巻2 号 p. 2_136-2_149
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    断層変位によって構造物が損傷すれば機能喪失に至るおそれがある.ハザードとしての断層変位を照査する確率論的断層変位ハザード解析(PFDHA)の従来の枠組みでは,主断層からの距離に基づいて副断層の特性を評価する.近年,遠方での断層変位の減衰特性を把握するため,地表地震断層を主断層と副断層に分類することなく,地下にある震源断層からの距離を用いて従来型の断層変位予測式を改良した新たな予測式が提案された.これは国内で初めて特定の構造物を対象とする本格的なPFDHAを実践した四国北西部の伊方サイトで抽出された課題の多くに取り組む足掛かりとなるものである.本研究では,震源断層からの距離に基づく予測式を取り込んだPFDHAを伊方サイトで実践し,新たな予測式の特性や伊方サイトでの検討から得られる知見について考察して報告する.

  • Ikuo CHO, Shigeki SENNA, Susumu NONOGAKI
    2026 年26 巻2 号 p. 2_150-2_172
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    We have identified microtremor horizontal-to-vertical spectral ratios (HVSRs) at numerous grid observation points in southeastern area of Saitama Prefecture within a rectangle with side lengths of approximately 35 km, at an average interval of about 1 km for 853 grids. Peak frequencies were read from the obtained HVSRs within a frequency range from 0.5 to 20 Hz, from which their spatial distribution was deduced (i.e., a peak frequency map). When multiple local peaks were observed within the analysis frequency range for reading, the amplitude difference between the peak and the corresponding trough was evaluated. Taking into account this information, we set a peak selection threshold and a weighting criterion and then selected a single peak to read the frequency. The resulting peak frequency map was compared with a pre-existing 3D geological structure model (i.e., the urban geological map, the UGmap) constructed based on numerous borehole data (< 7338 boreholes). They are in good agreement in their topographical and geological distributions. For example, in areas with thick alluvium (> 20 m) in the Arakawa and Nakagawa Lowlands, the peak frequency averaged a low value of 1.3 Hz, whereas in areas without alluvium, the average peak frequency was much higher at 4.7 Hz. The peak frequency of the HVSRs can be considered to be an indicator for quantifying qualitative assessments of ground conditions. The resulting peak frequency maps will be released on the website of the UGmap to enable detailed comparisons with geological distributions. We plan to construct and release similar peak frequency maps for the other regions involved in the UGmap in the future.

  • 山崎 文雄, 劉 ウェン
    2026 年26 巻2 号 p. 2_173-2_186
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,2016年熊本地震の前後の2時期に観測された航空レーザ計測データを用いて,南阿蘇村の立野・河陽地区における地殻変動量を3次元地形差分法に基づいて推定した.国土地理院が観測したオリジナルおよびグラウンドの点群データのICP法による空間相関から,3次元変位量を計算した.結果は斜面崩壊や地割れなどのローカルな地盤変状や建物倒壊などの影響を受け,計算ウィンドウの大きさにも依存するが,グラウンドデータからの推定結果は,測量基準点における観測変位量と比べて近似した値が求まった.

  • 中澤 駿佑, 汐満 将史, 境 有紀, 藤田 雄大, 江口 直希
    2026 年26 巻2 号 p. 2_187-2_227
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    2022年に発生した福島県沖の地震を対象として,震度6弱以上を観測した強震観測点周辺の被害調査を行った.その結果,いくつかの観測点周辺で外装材の剥離といった軽微な被害を受けた建物が見られたが,いずれの観測点でも周辺の建物で全壊・大破といった大きな被害を受けたものは見られなかった.観測された強震記録の性質を分析した結果,ほとんどの観測点で計測震度と相関のある周期1秒以下の短周期の応答が大きいために震度6弱以上となった一方で,建物の大きな被害と相関のある周期1–1.5秒の応答は小さかった.

  • 汐満 将史, 中澤 駿佑, 境 有紀, 長谷川 千紘, 稲見 圭人
    2026 年26 巻2 号 p. 2_228-2_246
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/29
    ジャーナル フリー

    2023年5月5日に発生した石川県能登地方の地震を対象として,震度5強以上を観測した強震観測点周辺の被害調査を行った.その結果,K-NET正院では全壊した木造建物が複数見られ,木造全壊率は10.5%に達していたが,その他の観測点では,全壊・大破といった大きな被害を受けた建物は見られなかった.観測された強震記録の性質と被害との対応について検討したところ,K-NET正院は,中低層建物の大きな被害と相関がある1–1.5秒応答が,木造全壊率が1.8%であった2004年新潟県中越地震JMA小千谷の1.1倍となっていた.震度6弱以上を観測したその他の強震記録は,震度と相関がある周期1秒以下の短周期の応答が大きい一方,周期1–1.5秒の成分は,木造全壊率が0%であった2011年東北地方太平洋沖地震K-NET築館よりも小さいものであった.

feedback
Top