日本地震工学会論文集
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論文
伝播経路特性に見かけ入射角依存性を導入した統計的グリーン関数法に関する検討
佐藤 吉之
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2025 年 25 巻 4 号 p. 4_37-4_50

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抄録

強震動予測の精度向上のために,観測記録に基づいて導出された見かけ入射角に依存する伝播経路特性モデルを取り入れ,計算波に対する影響について検討した.計算法には統計的グリーン関数法を用い,従来型の伝播経路モデルを用いた解析と比較した.震源としてマグニチュード7級の断層を仮定し,横ずれ断層と逆断層モデルを設定して地震動を算出した.見かけ入射角依存モデルの場合,断層分布範囲の直上,特にアスペリティ上部付近の振幅が増大するという影響が現れ,それ以外の領域では影響が小さいことが確認された.逆断層モデルでも同様に断層面直上付近の振幅増大が顕著であったが,断層下端直上から離れた領域においても振幅増大の影響が確認された.また,逆断層モデルでは上盤側の振幅が増大するいわゆる上盤効果が見られ,見かけ入射角依存モデルではこの領域内でも振幅を増大させる効果がみられた.以上のように大地震の場合には,見かけ入射角依存モデルの影響で振幅の増大が顕著な領域は震源断層直上全体に亘るのではなく,断層あるいはアスペリティとの位置関係によって,より狭い領域に限られる可能性があることが確かめられ,また逆断層の場合には,上盤効果と見かけ入射角による振幅増大効果が重畳する可能性が示唆された.

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