人間らしい生活と経済地理学という前提の下に,避難生活を支える災害時のレジリエントな供給体制(サプライチェーン) をどのように稼働させるのかを論じた.平時の供給体制がどのようにあるかということは経済地理学が取り組んできた一つの大きな主題であったともいえる.はたしてそれは,災害などの有事においても機能する体制なのだろうか.2024年の能登半島地震を振り返る時,その避難生活は決して人間らしい避難生活とはいえなかったと考える.人口減少と高齢化の進む国土周辺部の交通不便な半島部を襲った災害により,集落や避難所の孤立が相次ぎ,二次避難・広域避難を余儀なくされたからであり,今なお復興の遅れが指摘されているからである.それを回避するためのアイデアは少なからず存在していたはずであるが,それらは十分顧みられなかった.例えば,半島部を地震や津波が襲えば,海岸部を走る道路が寸断されることは自明であるものの,その対策は取られていなかった.それらの背景に,構造的差別がありはしないだろうか.大きな災害が起こったのだからそれはやむを得ないことだとして被災地や地方・国土周辺部をみる眼差しが存在してはいなかったのだろうか.こうした思考を今一度問い直してみたい.その際,構造的差別や社会的排除をみる視点としてフードデザートをめぐる議論,地方の抱える地域格差をみる視点として「同等の生活条件」の理念に着目した.