経済地理学年報
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表紙
研究ノート
  • ―河南省三門峡市A村出身者を事例として―
    阿部 康久, 李 春嬌
    2024 年 70 巻 2 号 p. 95-117
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル 認証あり

        中国中部地域の農村出身者を対象として,「新しい都市化計画」施行後の移住者の就業地域と定住希望地域についての検討を行った.2014年に中国政府が発表した「新しい都市化計画」では,中小規模の都市を念頭においた移住者の定住促進政策が実施された.これらの都市では交通インフラ等の整備が進み,教育や医療サービスの質も向上している.調査対象となった農村出身者の中には,大都市で就業した後,出身地に近い中小規模の都市への定住を希望する人が多い.村外就業者らは,大都市で就業・居住する際には高い収入が得られるものの,住宅費等の生活費も多くかかることや,公共サービスを受けるために必要な戸籍や持ち家の取得も難しいという制約も存在している.これに対して,出身地に近い中小規模都市であれば,インフラや公共サービスもある程度充実している上に,農村出身者の収入でも住宅の購入が可能であり,親世代の介護や子どもに比較的質の高い公教育を受けさせることもできる.このように出身地に近い中小規模都市を定住先として選ぶことは,都市生活のメリットと出身地への近接性から得られるメリットの双方をある程度享受することができる.その一方で,「新しい都市化計画」には,農業戸籍を維持したい農村出身者も多いことや,中小規模都市では依然として大都市に比べると雇用機会が少ないこと等の課題も存在している.

フォーラム
  • 松山地域大会実行委員会
    2024 年 70 巻 2 号 p. 118-122
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル 認証あり

        2023年10月14日(土)および15日(日)の2日間にわたり,経済地理学会松山地域大会を開催した.14日は「観光まちづくりと中心市街地活性化」をテーマとしたシンポジウムを開催し,117名の参加を得た.シンポジウムでは3件の報告を踏まえ,総合討論では活発な意見交換がなされた.15日(日)には松山市の中心市街地と道後温泉をめぐるエクスカーションを行い,34名が参加した.

  • 池田 千恵子
    2024 年 70 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル 認証あり

        本稿では,空き家や空き店舗を再利用しながら,地域全体を宿に見立てるアルベルゴ・ディフーゾに着目し,地域再生のプロセスならびに地域に及ぼす影響について検討した.また,地域が再生した後に生じた路線価の上昇や再開発など,ツーリズムジェントリフィケーションの兆候についても報告を行う.

  • 井口 梓
    2024 年 70 巻 2 号 p. 130-138
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル 認証あり

        本稿では,愛媛県松山市の「道後温泉」に紐づけ発信されたTwitterのデジタル写真を事例に,観光地におけるSNSの展開とデジタル写真にあらわれる観光空間の特性について検討した.映えないことを特徴とする Twitterの画像は,道後温泉の「見るべき・するべき」観光経験をリアルに切り取って4枚組み合わせることで,旅行記のような文脈が付与されており,これらをプラットフォーム上に大量に蓄積させ,典型的な観光ルートを構築した.投稿画像をみると,流行によって変動する道後温泉の表舞台と住民の生活を示す裏舞台の両方に観光のまなざしが向けられており,Twitterのプラットフォーム上での話題と複雑に影響し合いながら価値づけされ,道後温泉の地域像を創出している.

  • 宮﨑 光彦
    2024 年 70 巻 2 号 p. 139-146
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル 認証あり

        本報告はコロナ禍を経た道後温泉の持続可能な観光まちづくりの概要と推進体制,具体的な取り組みについて紹介することを目的とする.道後温泉の宿泊客は近年,個人化の進展と若年層・女性客・ビジネス客・教育旅行が増加している.1992年に道後温泉誇れるまちづくり推進協議会を設立し,道後温泉の根本的課題解決に向けて,産地官学金という地域・関係者一体となった観光資源・滞在環境の改善,景観計画の導入,第3の外湯建築である飛鳥乃湯泉の設置,現代アートとの連携等を通じてまちづくりを推進してきた.今後は100年先を見越して来訪者を創造する新しい観光まちづくりを進めていく必要がある.

  • ―シンポジウム総合討論―
    佐藤 裕哉, 和田 崇
    2024 年 70 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2024/06/30
    公開日: 2024/08/26
    ジャーナル 認証あり

        2023年10月14日(土)に愛媛大学南加記念ホールにて「観光まちづくりと中心市街地活性化」をテーマとしたシンポジウムを開催した.3 件の報告に続く総合討論では,「温泉観光地」「まちづくり」「地域資源」「連携・協働」「持続可能性」をキーワードとして,活発な意見交換がなされた.意見交換を通じて,持続可能な観光まちづくりに向けて,地域内外に担い手やファンを育てること,地域のファンを増やしたり,住民のシビックプライドを高めたりして,多くの人が活動に参画する仕組みをつくることが重要だという方向性を確認した.

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