経済地理学年報
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表紙
研究ノート
  • 古川 智史
    2018 年 64 巻 2 号 p. 73-92
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

        本稿では,日本の広告産業の特性に着目しながら,国内における大手広告会社の事業所展開を考察した.
        戦前,分析対象企業の事業所配置は,通信業の兼業の有無,取扱い広告の特徴から差異がみられたものの,基本的には大都市を中心としたものであった.戦時中には,企業整備が実施され,電通が4拠点を維持した一方,関西で創業した分析対象企業は東京の拠点を切り離すことになった.戦後,高度経済成長を背景に広告市場が拡大するとともに,地方圏に放送局が開局したことで,分析対象企業の事業所網が拡大した.加えて,媒体状況の変化による直取引の慣行の変化が地方圏への進出の契機になった.オイルショック以降,一時的に地方の広告市場に目が向けられたものの,広告出稿が大都市に集中する傾向が強まると,相対的に地方拠点を多く抱えた分析対象企業はその効率化を進めた.また,大阪に本社を置く分析対象企業は東京の拠点の強化を進めた.1990年代以降には,ローカルな広告市場における新規需要の開拓,賃金体系の見直しを背景に,地方支社を分社化する動きが進んだ.
        分析結果を踏まえると,大手広告会社の事業所配置は,広告主と媒体社との関係性の中で構築され,また広告取引では既存の関係が重視されるため維持される傾向にあったと考えられる.

フォーラム
  • 伊藤 達也
    2018 年 64 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー


        本稿では利根川の利水問題について検討を行った.第1に,利根川水利用の現況を明らかにし,今後,水需要増加が想定されないことを確認した.第2に利根川河川水利システムの抱える問題点を,特に栗橋地点の流量管理問題に焦点を当てて検討した.第3に国土交通省による八ッ場ダム利水計画の検討手続きの欠点を明らかにした.国土交通省は異常渇水対策を検討すべきところ,通常時の水源確保策の検討にとどめており,「既得水利の合理化・転用」案と,「渇水調整の強化」案の適切な検討を行っていない.最後に,小河内ダムの予備水源化問題と東京都の水源地域対策の歪みを指摘した.このように利根川の利水問題は深刻であり,より適切な解決策が求められている.

  • 関 良基
    2018 年 64 巻 2 号 p. 102-112
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

        利根川の基本高水流量は,計算モデルのパラメータを恣意的に操作することで実際よりも1.5倍に引き伸ばすことが可能であることが明らかになった.基本高水流量に基づいてダム計画が定まるのではなく,ダム計画の有無に合わせて基本高水流量を操作することが可能なのだ.本稿ではダム計画における以下の2つの瑕疵を論じる.①国交省は,森林が劣化していた1950年代の洪水を基準に基本高水流量を定め,その後の森林回復による洪水流量低下の事実を隠蔽している. ②新しい地質年代の火山岩層等では,300mmを超える豪雨でも河川への流出率が100%になることはないにもかかわらず,国交省はそれを100%と仮定して基本高水流量を引き上げている.

  • 梶原 健嗣
    2018 年 64 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

        日本の治水計画は,河川整備基本方針で長期的なグランドデザインを定め,河川整備計画で,今後20~30年間の具体的な計画を定める.この中で,核となるのは治水計画の想定洪水=基本高水とそのピーク流量(基本高水流量)である.
        この基本高水流量の決定に際し,決定的な影響力を持っているのが貯留関数法という「治水の科学」である.しかし,その算定では過大な流量が導き出される恐れがある.あるいは,治水計画に事業計画が対応せず,「半永久的に未完の治水計画」になる場合もある.
        では,そうした河川で水害が起きた際に,河川の管理瑕疵は問われるのか.水害訴訟は,本来は,被害者救済とともに行政の瑕疵・責任を検証しうる制度として期待されたはずである.しかし,初の最高裁判断となった大東水害訴訟判決により,この期待は機能不全となってしまっている.大東基準として確立した法理に照らせば,「過大な基本高水」の下では,河川管理責任はブラックボックス化しかねないのである.

  • 熊本地域大会実行委員会
    2018 年 64 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

        2017年11月26日・27日の両日,経済地理学会熊本地域大会を開催した.26日は熊本大学を会場にシンポジウム「地震災害と地域経済」を行い,57名が参加した.東日本大震災をふまえた復興パラダイムシフトについての基調講演の後,熊本地震および東日本大震災に関して,行政・製造業・観光業・商業の観点からの個別報告4名(官界と産業界からの2名の報告を含む) と,2名からのコメントをもとに,復興のあり方や経済地理学の役割などについて幅広く活発な討議が行われた.27日は「熊本地震の被災地の現状と復興の現場をみる」と題したエクスカーションを実施し,益城町・西原・南阿蘇村を訪ねた.28名の参加者を得て熱心な質疑応答がなされた.

  • 山川 充夫
    2018 年 64 巻 2 号 p. 129-137
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

        本稿では東日本大震災,とりわけ東京電力福島第一原子力発電所事故の被害が今なお残る福島県の復興過程における諸問題を振り返ることで,熊本震災復興への示唆を考える.熊本震災の復興のあり方をめぐって,東日本大震災から学ぶべき教訓は「ふるさとの価値」再生を保障する視点を震災復興政策にきちんと位置付けなければ,少子高齢社会においては被災者の生活再建や被災地の復興が費用対効果の低いものにとどまらざるを得ないということにある.東日本大震災後に実施された創造的復興政策は,財政投資が被災地域へのインフラ整備に過度に偏ったものとなったため,被災者の生活再建への保障が十分ではなかった.そのような政策は,熊本震災復興でもかえって人口の域外流出を高めてしまう恐れを含んでいる.

  • 鹿嶋 洋
    2018 年 64 巻 2 号 p. 138-149
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー

        本稿は,熊本地震による製造業の被害状況と復旧・復興の過程についての現状把握を試みた.
        製造業における被害は,建屋や生産設備の倒壊・破損等の物的被害が中心であり,布田川・日奈久断層帯の近傍に立地する企業で物的な被害が大きいなど,局地的に大きく異なる.加えて,企業規模や業種なども被害状況の地域差に影響を与えている.当地域での生産停止がサプライチェーンの途絶をもたらし,他地域に波及する例があった.東日本大震災を経験した進出企業が事業継続計画(BCP)に基づき復旧に取り組んだことが比較的早期の操業再開に寄与した.また企業の復旧に当たりグループ補助金が重要な役割を果たした.

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