抄録
小児腸重積症の診断において腹部超音波検査 (US) の有用性は確立されているが, 注腸整復の是非あるいはそれが可能かどうかを予測する指標はいまだに明確でない。従来より年齢, 発症からの時間, 腸管閉塞の程度などから非観血的整復の適応が判断され, USにより腸管壁の肥厚やtrapped fluidの有無が評価できるようになった。しかし, 腸管虚血と穿孔の危険性を予測できればより安全な注腸が可能になるものと考える。今回パワードップラー検査による重積腸管の血流評価を行い, 従来の基準との比較検討を行った。重積腸管の血流障害の有無は, 年齢, 発症からの時間, 腸管閉塞の有無などに比して非観血的整復の成功率を予測するよい因子と考えられた。また, 重積腸管の血流障害がない場合には, いずれの場合にも整復率が良好であった。しかしながら, 血流障害があっても整復可能な症例があり今後腸管壁の虚血が必ずしも壊死を意味するものではないことも判明した。