日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
症例報告
肛門からの杙創により直腸・胃・横隔膜・肺穿孔をきたした1例
園原 史訓原田 明生市川 俊介
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 29 巻 7 号 p. 1037-1039

詳細
抄録

症例は52歳男性。建設現場で就労中に高所から転落し,鉄筋が肛門より体内へ突き刺さった。救急搬送,レスキューの要請は行われず,現場で鉄筋は体内より抜去された。来院時患者は意識清明で肛門部痛を訴えるのみであった。胸腹部CT検査で左血気胸と少量の腹水を認めたため,全身麻酔下に緊急手術を行った。開腹すると直腸に穿孔部位があり,ここを修復し,S状結腸双孔式人工肛門を造設した。さらに腹腔内の検索で腸間膜損傷,胃損傷,横隔膜損傷が確認された。各部の修復を行った後,開胸すると食物残渣を含む血性胸水と左肺舌区に穿孔部を認め,腹腔から貫通してきた鉄筋が肺を貫いたと考えられた。幸運にも心,大血管の損傷は認めなかった。術後は5日間の集中治療を要したものの経過良好で術後21日目に退院した。胸腔まで至った杙創の1例を経験したため報告する。

著者関連情報
© 2009 日本腹部救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top