抄録
1型盲腸癌が先進部となり盲腸から全上行結腸が横行結腸内に陥入し,イレウスを呈した成人型腸重積症の1例を経験した。症例は79歳の男性で,正常圧水頭症に対するV-Pシャント目的で当院脳神経外科に入院中であったが,突然の左季肋部痛のため当科へ転科となった。腹部所見では左季肋部に手拳大の弾性・硬で可動性のある腫瘤が触知され,腹部単純X線像では上腹部に著明なniveau像が認められた。腹部CT検査では横行結腸に径6cm大のtarget signおよびpseudo-kidney signを呈する腫瘤性病変と腸管内への腸管陥入像が認められ,腸管の腫瘤性病変が先進部となって惹起された腸重積症によるイレウスと最終診断し緊急手術を施行した。手術所見では回腸末端部から全上行結腸が横行結腸中央部まで陥入し,腫瘤を含めた陥入腸管切除を施行した。摘出標本では先進部腫瘤は径5cm大の1型盲腸癌で,病理組織学的検索ではpSS, pN1, sP0, sH0, cM0:Stage IIIaであった。