日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
Composix Kugel Patch®を用いた腹壁瘢痕
ヘルニア修復術後に小腸穿通を形成した1例
山下 俊田中 信孝野村 幸博
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2010 年 31 巻 1 号 p. 115-118

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抄録

症例は71歳男性で,他院で胃癌に対し胃切除を行い4ヵ月後に腹壁瘢痕ヘルニアを発症したためComposix Kugel Patch®を用いた修復術が行われた。6年8ヵ月後,腹部正中創の発赤・疼痛を訴え当院受診となる。Computed Tomography(CT)では正中創直下で人工物周囲の膿瘍を認め,癒着した小腸への穿通が疑われた。その後手術にて人工物とともに強固に癒着する小腸約30cm長を一塊として切除した。腹壁瘢痕ヘルニアに関しては大腿筋膜自家移植により修復した。摘出標本を観察するとComposix Kugel Patch®が癒着した小腸へ穿通していた。Composix Kugel Patch®は発売以来,expanded Polytetrafluoroethylene(ePTFE)面が腸管と癒着を起こさないために腹膜欠損を伴うような巨大ヘルニアや腹腔鏡下手術での有用性が強調されてきたが,人工物感染の報告が除々になされるようになってきた。一方,Composix Kugel Patch®の腸管穿通形成例は,少なくとも2010年までの本邦医中誌検索では認めない。今回われわれはまれな症例を経験したため文献的考察を加えて報告する。

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© 2010 日本腹部救急医学会
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