症例は69歳男性。既往に統合失調症を認めた。約2週間前から便秘を訴えていたが，突然の便汁様嘔吐および下腹部痛を呈したため当院に来院した。来院時はショック状態で，腹部は著明に膨隆し腹膜刺激症状を認めた。腹部CTでS状結腸に便塊を認め口側腸管の拡張を認めたことから汎発性腹膜炎を伴った宿便による閉塞性大腸炎を疑い同日緊急手術を施行した。術中所見でS状結腸に硬便を認め，横行結腸からS状結腸まで拡張し，横行結腸から下行結腸に潰瘍を伴う虚血性変化を認めたため宿便による閉塞性大腸炎と診断した。壊死腸管を含めた拡大左半結腸切除術および人工肛門造設術を施行した。術後は合併症なく軽快し転院となった。高度な宿便から腸閉塞をきたした高齢者では閉塞性大腸炎を呈している可能性も考慮すべきである。
