抄録
11年間血液透析を受けていた64歳の男性が2010年6月に突然の左側腹痛を主訴に受診した。CTで左後腹膜腔に10cm大の血腫像を認め,内部に多発性嚢胞と造影剤の漏出を認めた。腎臓由来の後腹膜出血と診断し,鑑別疾患として腎嚢胞破裂をあげた。血行動態は安定していたが血液透析の継続には確実な止血が望ましいと考え,手術治療を選択した。腹部正中切開で良視野のもと腎茎部を処理し,そのうえで血腫と腎臓を一塊として摘出した。切除標本では複数の嚢胞内に出血を認め一部の嚢胞に破裂を伴っていた。腎嚢胞の特発性出血による自然破裂は極めてまれであるので報告する。