日本腹部救急医学会雑誌
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症例報告
肝硬変を伴う胃癌術後の上腸間膜静脈血栓症の1例
中村 学
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2012 年 32 巻 6 号 p. 1107-1111

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抄録

症例は74歳,女性。胃癌,胆嚢結石症の診断で開腹手術を行い,術中所見より肝生検も行い肝硬変と診断された。術後,吻合部狭窄のため食事開始が遅れた。術後24日目より微熱や食欲不振,嘔吐が出現して,術後40日目の腹部単純X線撮影で腸閉塞の所見を認めた。イレウス管造影では上部空腸に拡張不良を認め,翌日の腹部CTでは上腸間膜静脈末梢から門脈臍部,中枢側空腸静脈枝に広がる血栓を認めた。上腸間膜静脈血栓症と診断して,血栓溶解療法と抗凝固療法による保存的治療を選択した。消化管造影により,血行障害部空腸を経時的に観察したが,空腸狭窄による通過障害が出現したため,発症から約6ヵ月後にバイパス術を施行した。再手術後は通過障害なく順調に経過した。血栓発症時には血液凝固線溶系の精査を行わなかったが,退院後の精査では凝固線溶系に異常を認めなかった。

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© 2012 日本腹部救急医学会
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