2014 年 34 巻 1 号 p. 143-146
症例は50歳の女性。腹痛と嘔吐を認め,当院を受診していたが,当初は胃炎と診断されていた。同日夜間に嘔吐を繰り返すようになったため,当院を再診し経過観察入院となり,翌日イレウスの診断で当科へ紹介となった。上腹部の圧痛と,高度の炎症反応を認め,腹痛は経時的に増悪していたため,絞扼性イレウスを疑い,緊急手術を行った。開腹すると,虫垂の先端がループ状に回腸間膜に癒着しており,バウヒン弁から10cm口側の回腸係蹄が,10cmにわたって絞扼されていた。絞扼を解除すると,腸管の血流が改善したため,腸切除は行わず,虫垂切除術を施行した。虫垂の先端の癒着部は,病理組織学的にカタル性の急性虫垂炎と診断された。絞扼性イレウスは,外科医であれば臨床の現場でしばしば遭遇する疾患であるが,虫垂自体が絞扼帯になることはまれであるため,若干の文献的考察を加えて報告する。