抄録
症例は49歳男性。前医で虫垂切除術後に2回の縫合不全を生じ,当院に搬送された。汎発性腹膜炎に加え,右側腹部から腋窩に及ぶ壊死性筋膜炎を生じていた。壊死部のデブリドマンと開腹洗浄ドレナージ,ストーマ造設を行ったが,20×18cmの腹壁欠損を生じ,輸液バッグによるSilo Closureを行った。入院9日目にSiloを除去しVacuum Pack Closure(VPC)としたが,翌日に露出腸管の脆弱部に穿孔を生じた。一期的縫合閉鎖は再穿孔を繰り返すため困難であったが,反復縫合閉鎖で腸内容の流出は制御され,入院34日目に筋皮弁移植による腹壁再建を施行できた。皮弁は生着し,穿孔部も腸管皮膚瘻を形成後に閉鎖した。一般に開腹創管理にVPC法は有用だが,腸管の脆弱性等がある場合,陰圧による損傷のリスクがあり,またその穿孔に対しては,反復縫合閉鎖による腸内容流出制御が有効な治療法の一つと考えられた。