2015 年 35 巻 6 号 p. 777-780
症例は68歳男性,2010年に左鼠径ヘルニア嵌頓を用手的に整復し,14日後に待機的根治術を施行した。その後の経過中には異常を認めなかったが,術後1年6ヵ月経過した2012年に腹痛・嘔吐を主訴に当院を受診した。腸閉塞と診断されイレウス管で保存的加療を行ったが小腸の限局性狭窄を認め,経口摂取開始後早期に腸閉塞が再燃したため保存的加療の限界として手術を施行した。イレウス管造影で閉塞部位が同定され,十分な減圧が得られていたため単孔式腹腔鏡手術を選択した。小腸の限局性狭窄と腸間膜の炎症性変化を認め,小腸部分切除術を施行した。病理検査で遅発性虚血性小腸狭窄と診断した。鼠径ヘルニア嵌頓整復後には遅発性虚血性小腸狭窄が発症する可能性を念頭に置いた長期経過観察が必要であり,その治療には単孔式腹腔鏡手術が有用であると考えられた。