2016 年 36 巻 3 号 p. 623-627
症例は13歳,女児。持続する腹痛と嘔吐を認め,当院に入院した。腹部CTで左傍十二指腸ヘルニアと診断し,手術を行った。腹腔鏡下に観察すると,小腸が下腸間膜静脈(IMV)の背側を潜り下行結腸間膜の後面に嵌入していた。さらにヘルニア囊内の小腸の一部がIMV左側から下行結腸間膜の漿膜を破り,腹腔内に脱出していた。嵌入した小腸に壊死はなく,牽引すると容易に整復され,Treitz靭帯左側の傍十二指腸窩にヘルニア門を認めた。ヘルニア門とヘルニア囊破綻部分を縫合閉鎖した。傍十二指腸ヘルニアは後腹膜窩ヘルニアに分類される比較的まれな疾患であり,腹腔鏡下手術が完遂された報告例は少ない。傍十二指腸ヘルニアに対する腹腔鏡下手術は,良好な視野で診断から治療が可能で,よい適応と考えられる。