2016 年 36 巻 3 号 p. 661-665
症例は77歳,男性。腹痛を自覚し当院救急外来を受診した。下腹部に圧痛,軽度反跳痛を認めたが,筋性防御は明らかではなかった。腹部造影CTで腹腔内に少量の遊離ガスと腹水貯留を認めた。また,小腸の壁肥厚像と周囲脂肪織濃度上昇を認めた。小腸穿孔性腹膜炎と診断した。保存的治療を行い軽快し,経口摂取可能となった。入院第10病日の胸部CTで右肺に腫瘤性病変を認め,経気管支的生検にて原発性肺小細胞癌と診断した。小腸病変は小腸転移と考えられ,それに伴う穿孔性腹膜炎であったと診断した。保存的治療により腹腔内の膿瘍は消退した。その後,化学療法を施行する方針となり,発症後第50病日に再穿孔予防のため,待機的に小腸部分切除術を施行した。術後経過は良好で,術後第9病日に退院した。病理組織学検査で肺小細胞癌の小腸転移と診断した。その後,全身化学療法を施行し,穿孔性腹膜炎発症後,475日間の生存期間が得られた。