2017 年 37 巻 1 号 p. 023-027
症例は90代女性。腹痛,嘔吐を主訴に近医を受診し,腹部CT検査で腹水貯留が認められ,穿刺により血性腹水を認め腸管壊死疑いで当院に搬送された。当院の腹部CT検査でも,腹水の貯留に加え広範囲のイレウス所見も認められた。非閉塞性腸管虚血(NOMI)を疑い,緊急血管造影下にパパベリン塩酸塩動注後に緊急開腹手術を行った。広汎な小腸壊死と分節状・散在性の腸管壊死を認め,腸管を2ヵ所切除し,damage control surgeryとして吻合は行わなかった。Open abdomenで集中治療室に帰室し,パパベリン塩酸塩の持続動注を追加した。約40時間後に2nd look surgeryを行い,壊死の進行はなく,腸管を吻合し,術後は良好な経過をたどった。NOMIは診断が遅れると致死的であるが,確立した診断基準がないことから,初診時にNOMIを疑い,迅速な検査・治療を進めていくことが,救命には不可欠と思われる。