2017 年 37 巻 1 号 p. 085-089
症例は65歳女性。主訴は腹痛。腹部単純X線写真でfree airを認め,腹部CT検査を施行し,汎発性腹膜炎の診断で当院へ搬送となった。身体所見では左下腹部を中心とした圧痛・反跳痛を認めた。血液・生化学所見では,WBC 4,700/μL,CRP 37.21mg/dLで炎症反応高値であった。腹部CT検査では上部空腸に穿孔を認め,周囲にfree air,腹水を認め,上部空腸穿孔による急性汎発性腹膜炎の術前診断で緊急手術を施行した。術中所見ではTreitz靭帯より肛門側へ10cmの空腸腸間膜側に穿孔を認め,空腸部分切除,十二指腸空腸吻合術(側々吻合)を施行した。摘出標本では明らかな腫瘍性病変はなく,憩室穿孔が原因と考えられ,病理では,仮性憩室穿孔の診断であった。上部空腸憩室穿孔はまれな疾患であるが,消化管穿孔の鑑別診断として考慮する必要のある疾患である。