2017 年 37 巻 1 号 p. 099-102
症例は,25歳の男性で,下腹部痛を主訴に来院した。すでに血管型Ehlers-Danlos症候群と診断されていた。採血上では炎症反応の上昇を認めなかったが,左下腹部に軽度の圧痛と筋性防御を認め,既往から消化管穿孔を疑い精査を施行した。CT上腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔性腹膜炎と診断し,同日緊急手術を施行した。開腹すると腹腔内の汚染は軽度であったが,S状結腸にピンホール状の穿孔を認めた。穿孔部周囲の腸管や腸間膜の状態はよく,穿孔部を楔形に切除して一期的に縫合閉鎖した。術後経過は良好で,術後第13病日に軽快退院した。Ehlers-Danlos症候群は,遺伝子異常により全身の組織に脆弱をきたす疾患である。血管型はもっとも重篤なタイプで,若年時に血管破裂・解離,消化管穿孔を引き起こすことが知られている。穿孔部を楔形に切除・吻合して良好な結果を得た1例を経験したので報告する。