2023 年 43 巻 6 号 p. 955-958
症例は82歳の女性。交通外傷により受傷した。来院後の腹部造影CTで上腹部に腹腔内出血を疑う高吸収域を認め,血管造影で膵頭部アーケードからのextravasationを認めコイル塞栓で可及的に止血,受傷機転から消化管損傷を否定できず試験開腹を施行,膵鉤部の挫滅を認めたが消化管損傷は認めず手術を終了した。第1病日に血圧維持困難で緊急手術を施行,膵挫滅部からの拍動性出血と十二指腸の色調不良を認め膵頭十二指腸切除術が必要と判断し,手術時間短縮のため再建は膵空腸吻合,胆管空腸吻合のみ行いopen abdominal managementとした。全身状態が安定し第3病日に胃空腸吻合,腸瘻造設を行い閉腹,術後ISGPF Grade Bの膵液瘻を認めたが第42病日に退院された。Damage control strategyを適応し,二期的に膵頭十二指腸切除術を行い救命した外傷性膵損傷の症例を経験した。