日本腹部救急医学会雑誌
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腹部救急疾患と下大静脈損傷
佐久田 斉松原 忍
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2004 年 24 巻 5 号 p. 907-913

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抄録
下大静脈損傷は腹部救急疾患のなかで最も治療困難なものの一つである. 下大静脈の損傷部位は, 肝上部, 肝後面, 腎上部, 腎部, 腎下部に分けられ, 腎下部の損傷が全体の1/3から1/2を占める. 肝後面下大静脈損傷はまれであるが, ほとんどの場合肝静脈損傷と重篤な肝損傷を伴い最も重篤な病態である. 下大静脈損傷の治療上の問題点は, 循環動態を維持しつつ血管修復のためにいかに良い視野を得るかである. そのためOCclusiveclamp法, 内シャント法, 大動脈遮断バルーンカテーテル, 自己血回収装置, 体外循環装置など各種補助手段が考案されている. 本稿では報告例および自験例から, 腹部救急疾患に関連した下大静脈損傷の修復方法とその補助手段を受傷部位別に論じた. また感染性腹部大動脈瘤の切迫破裂に対する緊急手術時に経験した腎下部下大静脈損傷の1例を提示した. 本例では感染と炎症の波及により脆弱化した腎下部下大静脈を人工血管にて置換した.
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