2004 年 24 巻 6 号 p. 1047-1051
交通事故での腹部鈍的外傷で, 総胆管膵骸部完全断裂を生じ, Drip Infusion Cholangiography-3 dimensional Computed Tomnography (DIC-3DCT) にて術前診断し空腸胆管吻合で治療し得た症例を経験した。その発生機序として加速度が急激に停止した反動 (deceleration) により, 後腹膜に固定された骸器から胆道系が引き抜かれるように損傷したと考えられる。この場合, 緊急手術が必要となることがあり, 受傷時の迅速な診断が望まれる。本例は, CT, 血管造影で消化管穿孔と腹腔内持続性出血が否定されたため, 胆道系損傷を鑑別するためにDIC-3DCTを施行し早期診断し得た。上腹部鈍的外傷時の胆道系損傷はまれではあるが, その可能性を念頭におき, 疑った場合にはその検索を積極的に行うべきである。