日本腹部救急医学会雑誌
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腹部大動脈手術に合併した腸管虚血症例の検討
水島 恒和打越 史洋北川 透西田 俊朗伊藤 壽記松田 暉
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2005 年 25 巻 3 号 p. 487-491

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抄録

1996年~2002年の当科における腹部大動脈手術症例165例中, 腸管虚血症を合併し腸切除術を要した症例は8例 (4.8%) であった。腸管虚血症発症時期は術中2例, 術後6例であった。8例中6例 (75%) は下腸管膜動脈領域の大腸のみならず, 上腸間膜動脈領域の小腸にも虚血を認めた。術後に発症した6例中腹部症状を示した例は3例 (50%) に過ぎず, アシドーシスなどの非特異的な所見を呈する症例が多く認められた。小腸虚血症6例の内上腸間膜動脈本幹に閉塞を認めた症例が3例, 上腸間膜動静脈に明らかな閉塞を認めなかった症例が3例であった。術後合併症として残存腸管虚血6例, 縫合不全・腹腔内感染3例, 出血1例を認め, 8症例中7例が死亡した。虚血性大腸炎が克服されつつある現在, 腹部大動脈手術後の腸管虚血症としては虚血性大腸炎より, むしろ小腸虚血症の頻度が相対的に増加しており, 診断・治療の工夫が望まれる。

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