日本腹部救急医学会雑誌
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クローン病に合併した肝膿瘍の 1 例
和田 滋夫阿部 孝尾下 正秀目連 晴哉田邊 淳林 保久保 光彦岡田 則子笠原 彰紀
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2005 年 25 巻 3 号 p. 567-570

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抄録

症例は57歳男性。約20年前よりクローン病 (Crohn's disease: 以下, CD) の加療中であり, プレドニンの内服を行っていたが, 活動性は持続していた。発熱, 右腰背部痛を主訴に受診した。血液生化学検査ではCRP30.72mg/dlと著明な炎症所見を認めた。腹部超音波, CT検査にて肝右葉に孤立性の膿瘍を認めた。当初経皮経肝膿瘍ドレナージ術施行を考慮したが, 抗生物質投与により炎症所見は徐々に軽減し画像検査上も肝膿瘍の縮小を認めたため, ドレナージ術は施行しなかった。CDに肝膿瘍を合併することは非常にまれであるが, 本症例ではCDの活動性の持続, および, ステロイド投与による易感染性が起因になったものと思われる。CDにステロイド長期投与を行っている際, 腹部症状・発熱が持続する場合には, ほかの腹部膿瘍などとともに肝膿瘍の併発も考慮しなければならない。

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