2024 年 12 巻 1 号 p. 12_10-12_17
学生は習熟した自己調整学習者に成長すると自ら改善点に気づき,より高い自己効力感をもって目標の達成に向けてさらなる自己調整をするようになる(Zimmerman(1998))。したがって教室において学習者を習熟した自己調整学習者に育成することは極めて重要である。本稿は学習者が自己調整スキルを高める過程において社会的認知の原理がいかに適用できるかについて方略を用いて例示し,Zimmerman(1998)の学習サイクルの枠組みの中でこれら方略の機能について事例分析を行った。具体的には,講義セッションとティーチングアシスタント(TA)によるセッションでの方略を社会的認知理論に基づき分析し,これら方略の機能と方略間の関係,各方略と学修成果との関係を統計的にも検証した。TAセッションの導入に伴う変化についても考察し,今後日本の大学教育に導入しうる自己調整学習のシステムや方略について多面的に議論した。