2001 年 16 巻 p. 135-146,183
本稿は宇都宮市長選挙に出馬した民主党推薦候補者石海行雄の事例を実地調査し,分析したものである。
官僚出身の落下傘候補者の集票母体の構成や集票活動の管理は,民主党と労働組合に重点を置いていたが,新たな集票活動のユニークなパターンとして,シンポジウムを開催することおよび選挙公約の作成にあたっては,官僚のキャリアを生かしたことが注目される。
そして当候補者の選挙活動を選挙キャンペーンモデルに適用すれば,「準政党中心モデル」の特徴が示される。このことは当候補者の集票活動の運営は,推薦政党の民主党が主導権を握っていたが,労働組合の支援のない民主党は実力のない看板政党に過ぎないものと考えられるからである。なぜならば,民主党(栃木県連)の再結成は主に労働組合出身議員の合流から成立ったものの,労働組合はかならずしも民主党を支持するものではないのである。こうして,労働組合からの支援を有することを前提とする民主党により運営される選挙活動は「準政党中心モデル」と称する。